高圧治療室(読み)こうあつちりょうしつ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高圧治療室
こうあつちりょうしつ

減圧症(潜函(せんかん)病、潜水病)患者を収容し、高圧空気を送って再圧療法を行う治療室。高圧治療室の基本型は横置き円筒型の気密耐圧室で、室の大きさは、患者1名のみを収容する小型単室で、移送可能のものから、直径2.5メートル、長さ7.5メートルで、内部が主室と副室に分かれ、必要に応じて患者とともに医師・看護人が入室し治療看護に従事できる複室式大型のものまで各種がある。
 減圧症とは、潜函工事や潜水といった高圧環境のもとで、身体の血液・組織に溶解した空気中の窒素が、急激な減圧、もしくは浮上によって気泡化し、血流を阻害したり組織を圧迫したりして障害をおこす疾病である。その症状は、皮膚の痒感(ようかん)(かゆみ)・丘疹(きゅうしん)(ソラマメ大以下の発疹(ほっしん))のような軽度のものから、関節痛、筋肉痛、呼吸循環系の障害による胸内苦悶(くもん)感、呼吸困難、脊髄(せきずい)障害による四肢(主として下肢)の運動知覚障害、脳を冒されて生ずるメニエール症候群、聴力障害、失語症など、非常に多彩なものがある。
 減圧症の治療は、患者の気泡を縮小・消失させ、血流を回復することに主眼があるため、患者を高圧治療室に収容し、再度、高圧環境に戻して症状の消失を図る。症状の消失後は、再発しないように徐々に減圧する。治療にあたっては標準治療表があり、症状に応じ、これに従って加減圧すればよい。再圧治療中は、1.8気圧(ゲージ圧)以下で患者に純酸素を吸入させると、症状の消失を早め、治療時間の短縮に有効とされるため、酸素療法の行われることも多い。高圧酸素療法は一酸化炭素中毒の治療などにも用いられる。
 高圧治療室のおもな付属設備には、(1)圧縮空気の送排気設備(これには空気圧縮機を用いて高圧空気を送るものと、高圧空気を充填(じゅうてん)したボンベを用いるものとがある)、(2)通信通話装置、(3)酸素吸入装置、(4)空気清浄防音装置、(5)冷暖房装置、(6)防火装置、(7)監視装置などがある。[前田平馬]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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