高圧酸素療法(読み)コウアツサンソリョウホウ

百科事典マイペディアの解説

高圧酸素療法【こうあつさんそりょうほう】

人体の臓器や組織が血行障害や血液成分異常のために低酸素状態におかれ,他の方法では改善が望めない時に行われる療法。患者をタンク中に入れ,2〜5気圧の高圧酸素状態下において,ヘモグロビンと結合しない状態の酸素の形で末梢にまで酸素を送りこむ。炭坑災害などの一酸化炭素中毒(赤血球の酸素運搬能力の低下)のような時にはきわめて有効。そのほか脳血栓(けっせん),腸閉塞(へいそく),四肢動脈閉塞,ショック,嫌気(けんき)性菌感染症などに対して有効。また大型タンク内での手術も行われ,さらに腫瘍(しゅよう)組織は正常組織よりも高圧酸素下で感受性が高まるため,放射線治療も試みられている。

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大辞林 第三版の解説

こうあつさんそりょうほう【高圧酸素療法】

高圧酸素室に患者を入れて気圧を上げ、血液中の酸素の濃度を増すことで効果を得る治療法。一酸化炭素中毒・シアン中毒・心筋梗塞などの治療に用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高圧酸素療法
こうあつさんそりょうほう

大気圧よりも高い気圧環境を人工的に作成し、そのなかで高濃度の酸素の吸入を続けると、血液中の溶解酸素は異常に増加する。この血液中の溶解酸素の増加を利用し、全身的あるいは局所的、さらには急性あるいは慢性の、生体の種々の組織に生じた低酸素症を迅速に改善し、治療しようという療法を高圧酸素療法という。われわれが生活している通常の大気圧下の環境での酸素療法、すなわち酸素吸入などによる治療法は、おもに赤血球中のヘモグロビンと結合する酸素(結合型酸素)の増量を目ざすものであり、この結合型酸素の増量には一定の限界がある。しかし、高圧酸素療法によって得られる血液中溶解酸素量は、気圧環境の変化によって規定される物理的な酸素溶解量であり、環境圧力の上昇によって溶解酸素は著しく増加し、溶解酸素の量にも限界がない。
 血液酸素分圧が100ミリメートル水銀柱(mmHg)前後の場合、ヘモグロビン酸素飽和度も100%に接近し、それ以上血液酸素分圧が上昇しても結合型酸素は増加しない。しかし、高圧下での血液溶解酸素量は、それ以上の血液酸素分圧に比例して増加する。たとえば、3絶対気圧の環境下で100%酸素吸入を持続したとき、動脈血中の溶解酸素量は6.2容量(vol)%も増加し、この量は生体の安静時酸素消費量に相当する。
 本療法は、通常、一酸化炭素中毒、四肢動脈閉塞(へいそく)性疾患、中枢神経系疾患、突発性難聴、網膜動脈閉塞などに用いられる。[田伏久之]

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精選版 日本国語大辞典の解説

こうあつさんそ‐りょうほう カウアツレウハフ【高圧酸素療法】

〘名〙 出血性ショック、心筋梗塞、悪性腫瘍などに利用される治療法。高圧下で酸素を吸入させると、血漿中に溶解する酸素が著しく増量する現象を応用したもの。

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