高齢原発(読み)こうれいげんぱつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「高齢原発」の意味・わかりやすい解説

高齢原発
こうれいげんぱつ

耐用年数に近い、あるいは、耐用年数を過ぎた原子力発電所。原発には法定上の耐用年数は定められていない。また、設置許可にあたっても運転許可年数があらかじめ決まっているわけではない。発電所の運転継続を認めるか、運転停止処分とするかは、(1)電気事業法で定める定期検査、(2)原子炉等規制法に基づいて行われる定期安全レビュー、さらには、(3)運転開始後30年を経過するに先立って行われる経年変化に関する技術的評価と、それに基づいて策定される長期保守管理方針(10年ごとに再評価)などの結果を総合して判断される。

 日本原子力発電の東海原子力発電所1号機は、1966年(昭和41)に運転を開始してから32年後の1998年(平成10)3月31日、運転を停止し、日本の商業炉として初めて廃炉処分の対象となった。従来、原発の耐用年数は30年程度と想定されてきたが、1999年2月、電力3社は原発の60年運転を想定した技術報告書を提出し、高齢原発の延命に向けて動き出した。それを受けた通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁も60年の長期運転を認める方向で、電力各社から出された保全計画を容認することに決めた。輸出用原発では、80年の運転期間を想定している。

 運転開始から40年を超え、2010年(平成22)中に停止するとされていた敦賀原子力発電所1号機(日本原子力発電)についても、2016年まで運転を延長する方針が示された。しかし、敦賀市長は、福島第一原子力発電所(東京電力)の事故炉と同型炉である敦賀原発の前倒し廃炉の可能性を示唆している。政府・電力業界は、福島原発事故によって新規立地や増設がますます困難になるなかで、高齢原発の運転期間延長に固執せざるを得ないだろうが、日本には運転開始後30年以上経過している原発が20基以上あり、今後、原発からの計画的撤退などの論議とも関わって、高齢原発政策の社会的受容性はいっそう大きな困難に直面するであろう。

安斎育郎

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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