国家行政組織法に基づいて、通商産業省設置法によって設置され、通商産業行政をつかさどった国の行政機関。1925年(大正14)に農商務省から独立し、商工省となり、一時軍需省となったが、1949年(昭和24)に通商産業省が発足し、1952年の新設置法の下で後述の任務を遂行してきた。通称、通産省とよばれてきた。経済、政治、社会状況に応じて機構改革が行われたが、1973年(昭和48)の機構改革で、いわゆる横割・縦割部局間の連携による総合的・多角的通商産業政策の実現を目ざす体制が形成されたとされている。2001年(平成13)の中央省庁再編で、経済産業省となった。
通商産業省は、次のような、国の行政事務および事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関であった。すなわち、通商の振興および調整ならびに通商に伴う外国為替(かわせ)の管理、通商経済上の国際協力の推進、鉱産物および工業品の生産・流通および消費の増進・改善および調整ならびに検査、商鉱工業の合理化および適正化に関する事務、計量に関する事務、電気事業・ガス事業および熱供給事業の運営の調整、鉱物資源の開発および電力等のエネルギーの供給の確保ならびに、これらの利用の推進ならびに発電水力の調整、鉱山の保全に関する事務、工業所有権に関する事務、中小企業の振興および指導、鉱工業の科学技術に関する試験研究およびその成果の普及、工業標準の制定および普及、商鉱工業に関する調整および統計その他商鉱工業に関する事務、国営通商事業、アルコール専売事業等、であった。
省庁再編前の、通産省の組織は次のようなものであった。長は通商産業大臣であり、内部部局として、大臣官房のほか、通商政策局、貿易局、産業政策局、環境立地局、基礎産業局、機械情報産業局、生活産業局の7局が置かれ、大臣官房に調査統計部、通商政策局に国際経済部および経済協力部が置かれていた。審議会としては、産業構造審議会、大規模小売店舗審議会、高圧ガス及び火薬類保安審議会、化学品審議会、情報処理振興審議会、航空機工業審議会、車両競技審議会、繊維産業審議会、産業技術審議会が、施設等機関として、計量教習所のほか製品評価技術センター、通商産業研究所が置かれた。特別の機関には、鉱工業の科学技術に関する試験研究等を行う機関たる工業技術院があった。また、地方支分部局として、通商産業局と鉱山保安監督局・部、外局として、資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁が置かれていた。なお、これらの業務の多くは、新省庁の経済産業省に引き継がれた。
[平田和一]
国の通商政策および産業政策(商鉱工業関係)を一体的に所管するとともに工業所有権,工業標準(JIS)等をも担当した行政機関。通産省と略称された。第2次大戦後の日本経済の高度成長を支えたその産業経済政策上の成果は,欧米先進資本主義諸国においても注目されている。
その歴史は古くは1881年4月創設の農商務省にさかのぼるが,直接には1925年設置の商工省がその前身である。発足当時の組織は大臣官房,商務局,工務局,鉱山局のほか,外局として特許局,官営八幡製鉄所が置かれていた。その後,若干の変遷があり,39年には物資別の局編成に移行し,43年に同省重工業部門を中心に軍需省に改組,その際事務の一部は農商省,大東亜省に移管された。45年8月商工省設置(軍需省廃止),同年12月貿易庁等設置,49年5月商工省と貿易庁等を統合して現在の通商産業省となった。近年における大幅な組織改正としては,73年7月の機構改革がある。部局の再編成により資源エネルギー庁,立地公害局(のち環境立地局と改称)が設置されるとともに,産業構造の変化等に即応した物資別原局の再編成等が行われ,今日に及んでいる。
現状の組織は,内部部局として大臣官房および7局,外局として3庁が置かれている。大臣官房は一般の官房業務のほか,工業統計,商業統計を担当している。通商政策関係を担当するのは通商政策局と貿易局であり,前者は,多国間および各国別通商政策や関税対策,経済協力等の政策企画を,後者は,輸出入関係許認可手続や輸出入関係の金融と為替,輸出保険等の実務を担当する。産業政策局は産業構造政策,産業組織政策や産業に関する金融・税制・企業行動の適正化,消費者行政,流通産業,サービス産業等を担当する。環境立地局は立地政策と工場立地指導,工業用水,環境保全と産業公害防止,リサイクル推進,鉱山保安,高圧ガス等の安全対策を担当している。物資別局としては,鉄鋼・非鉄・化学工業等を担当する基礎産業局,機械工業や情報産業,電子工業等の知識集約産業,宇宙産業等を担当する機械情報産業局,繊維・生活用品,窯業建材,住宅産業等を担当する生活産業局の3局がある。外局としては,石油,石炭,原子力,電力,ガス等資源行政,エネルギー行政を一体的に担当する資源エネルギー庁,特許,実用新案,意匠,商標等工業所有権に関する事務を担当する特許庁,各産業分野の中小企業を全体として担当し,その近代化,合理化,組織化や中小企業関係の金融・税制等中小企業行政全般に責任をもつ中小企業庁の三つがある。さらに,付属機関として鉱工業の科学技術に関する試験研究を担当する巨大機構としての工業技術院があり,その本院においてはサンシャイン計画,ムーンライト計画等をはじめとする大型のプロジェクトや工業標準を担当するとともに,その傘下に電子技術総合研究所等15の試験研究機関を持っている。また,地方出先機関としては,通産行政の総合的な出先機関である通商産業局(8)および鉱山における保安行政を担当する鉱山保安監督局(部)(6)がある。審議会としては,産業構造審議会の20審議会がある。2001年の省庁再編により経済産業省と改称した。
執筆者:八木 俊道
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貿易や商工行政などを担当する総合的な経済官庁。1949年(昭和24)5月25日施行の通商産業省設置法で設置。1881年(明治14)農商務省が設置され,1925年(大正14)農林省と分離され商工省となるが,43年軍需省に改組。第2次大戦終了後商工省が復活。49年のドッジ・ラインで経済自立化が緊急課題となり,輸出第一主義の行政機構に改組された結果,本省の設立をみた。商工省とその外局の貿易局とを統合し,「貿易・生産を一体とした一大貿易行政機構」となった。その後も52年,73年の組織変更をはじめ機動的に機構の再編・充実が図られ,資源エネルギー庁などが新たに設置されて1官房・7内局・3外局の体制となった。2001年(平成13)1月,中央省庁再編により経済産業省となる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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