精選版 日本国語大辞典 「魚臭」の意味・読み・例文・類語
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魚介類に特有の臭い。魚臭は,生鮮臭,鮮度低下臭,調理加工臭に大別される。一般には,含硫化合物,脂肪酸,含窒素化合物,カルボニル化合物,アルコール類,炭化水素類など多数の揮発性化合物で構成されるが,それらの含量はいずれもきわめて微量であるため分析が困難で,まだ不明の点が多い。魚介類には,サケ,アユ,エビ,カキ,ホヤ,ナマコなど生鮮時から特徴的な臭いをもつ種類とそうでないものとがある。アユでペンタデカンなどの直鎖炭化水素,ホヤで1-オクチルアルコール,シンチアオールなどが香気成分として明らかにされている。また,川魚の泥臭さはピペリジン系化合物による。魚介類が鮮度低下すると,トリメチルアミンや脂質酸化によるカルボニル化合物などが生成する。腐敗が進むにつれて,硫化水素,メタンチオールなどの含硫化合物,各種低級脂肪酸,アンモニアなどが加わって悪臭を形成する。焼魚の臭いでは,カルボニル化合物が重要で,調味液(たれ)をつけた照焼き,かば焼きでは調味料がおもにきいている。煮魚臭のうち,イカ肉の煮熟臭の主体は含硫アミンとされる。くさやの特異な臭気の主体は酪酸で,プロピルアルコールも関与する。薫製品の臭いは,魚介類からの各種揮発性化合物のほかに,薫煙に由来するフェノール化合物が関与しているが,とくに,かつお節の香気はよく研究されていて,100種以上の化合物が分離・同定されている。
執筆者:山口 勝巳
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