日本大百科全書(ニッポニカ) 「鯉こく」の意味・わかりやすい解説
鯉こく
こいこく
コイをみそ汁で長時間煮込んだもので、鯉濃醤(こいこくしょう)の名もある。醤はひしおといい、みその古名である。生きているコイの頭を首の付け根(3枚目の鱗(うろこ)の端)から切り落とし、胆嚢(たんのう)をつぶさないように取り除く。つぶすと全体に苦味と特臭がついて、そのコイは使いものにならなくなる。鯉こくにするには、鱗のついたままのコイを2センチメートルぐらいの厚さの輪切りにし、頭は適当に切り、尾もいっしょに使う。夏季には鱗をはがし2、3枚残しておいて、できあがった鯉こくに1枚つけて出すこともある。鱗まで食べられるようにするには、濃いめのみそ汁で一昼夜ゆっくり煮込むのであるが、いまは前夜2時間くらい煮てから蓋(ふた)をして冷暗所に置き、翌日出す前に1時間ほど煮る方法をとることも多い。もっとスピーディーにつくる場合もある。みそ煮にするのでコイのくせがなくなり、小骨は口に当たらずに食べられる。吸い口にはさらしねぎがよく、椀(わん)に入れたら粉さんしょうをふり込む。
[多田鉄之助]