改訂新版 世界大百科事典 「鳥付群」の意味・わかりやすい解説
鳥付群 (とりつきぐん)
海鳥がつき従っている魚群。〈とりづき〉〈だいなむら〉〈たかり〉などともいう。カツオについていうことが多いが,マグロ,サバ,イワシなどにも同様の現象が見られる。イワシの場合はこれが直接,海鳥の餌となるが,カツオ,マグロ,サバの場合は,これらがイワシ類などの餌の群れを追う際,おこぼれにあずかれるので追随しているものである。よく見られる海鳥はカモメ,アジサシ,ミズナギドリ,クロコドリ,カツオドリ,アホウドリなどである。空中を飛翔(ひしよう)する鳥は遠方からでもよく目につくので,漁船は魚群探索の手がかりとする。魚群の上で鳥が飛び回ることを〈とりやま〉という。この場合,海鳥が高く静かに飛んでいるときは魚群は中層に沈んでおり,騒然と水面近く降下を繰り返しているときは魚群が表層に浮上して摂餌しているなど,単なる魚群の有無だけでなく,魚群の状態も推定できる。鳥の数,移動方向は魚群の規模,移動方向を示す。鳥つきなどの魚群発見の手がかりは,魚群探知機が発展した今日でも重要性を失っていない。なお,魚群のことを漁業者は〈なむら〉あるいはなまって〈なぐら〉などというが,鳥つきのほかに,流木などについている〈きづき〉または〈ぼくづき〉,サメについている〈サメづき〉(熊野ではサメづきのカツオ群を〈えびす〉という),クジラについている〈クジラつき〉などのなむらを区別する。特別に何もついていない魚群を〈すなむら(素群)〉ということもある。
執筆者:清水 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報