日本大百科全書(ニッポニカ) 「カツオドリ」の意味・わかりやすい解説
カツオドリ
かつおどり / 鰹鳥
広義には鳥綱ペリカン目カツオドリ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。同科Sulidaeの仲間は全長65~95センチメートル、海上をやや速く羽ばたき、ときどきグライダーのように飛ぶことも交えながら前進する。この間、下方を向いて魚の群れを探す。みつけると、いったん停飛してねらいを定め、体側に翼を引きまとめながら海に突入する。こうして海表層の魚類をとらえる。この採餌(さいじ)法にあうように、円錐(えんすい)形の頑丈な嘴(くちばし)がある。体は葉巻たばこのような形をしていて、尾はくさび形で長く、翼も細く長い。足は短く水かきがあり、水中をいくらか泳ぐこともできる。飛翔(ひしょう)力も優れ、空中でトビウオをとらえることもできる。世界に9種すんでいて、二つのグループに分けられる。温帯域(北大西洋、南部アフリカ沿岸、タスマニア島、ニュージーランド)に繁殖する3種は全体に白く、シロカツオドリ(英語ではgannet)とよばれる。島に密集して営巣し、1卵を産み、それを水かきで包むようにして抱卵する。熱帯海域には6種が分布する。翼の上面は褐色で、顔や脚部の裸出部は鮮やかな黄、赤、青と種によって特徴的な色をしている。これらは英語ではboobyとよばれシロカツオドリと区別されるが、やはり島に密集して繁殖する。4種は地上に営巣し、1~2卵を産むが、2種は樹上に営巣し、ただ1卵を産む。日本では伊豆諸島南部、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島で種としてのカツオドリSula leucogasterが繁殖し、アオツラカツオドリS. dactylatraが尖閣(せんかく)諸島で、また、樹上営巣性のアカアシカツオドリS. sulaが南西諸島南部で繁殖している。
[長谷川博]