鶴林(読み)かくりん

精選版 日本国語大辞典 「鶴林」の意味・読み・例文・類語

かく‐りん【鶴林】

〘名〙 仏語釈迦入滅場所。釈迦が拘尸那掲羅(クシナガラ)城で入滅した時、そこを取り巻いていた沙羅双樹(さらそうじゅ)白鶴のようにまっ白に枯れたというところからいう。転じて釈迦の死。また、僧寺や、僧寺の樹林、あるいは人の臨終の意などにいう。つるのはやし。《季・春》
本朝文粋(1060頃)一四・朱雀院周忌御願文〈大江朝綱〉「臣等鶴林雲帰、鱗水義絶」
浮世草子男色大鑑(1687)六「木挽草滋(ククリン)の患禰宜町卧猪の床とならんと歎くのみなりしが」 〔杜甫‐望牛頭寺詩〕

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デジタル大辞泉 「鶴林」の意味・読み・例文・類語

かく‐りん【鶴林】

《釈迦入滅を悲しんだ沙羅双樹さらそうじゅが枯れて鶴のように白くなったという伝説から》沙羅双樹の林。転じて、釈迦入滅
鷲嶺じゅれいに月かくれ、―に煙つきて」〈著聞集・二〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鶴林」の意味・わかりやすい解説

鶴林
かくりん

釈迦(しゃか)がインド拘尸那掲羅(くしながら)城跋提河(ばつだいが)畔の沙羅双樹林(さらそうじゅりん)で入滅したときに、林が白色に変じたということから、その林の白さを鶴(つる)に例えて鶴林といい、転じて仏の涅槃(ねはん)の意に用いる。「鶴の林」と訓読し、また鵠林(こうりん)ともいう。『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』巻1に、「爾(そ)の時、拘尸那城沙羅樹林、其(そ)の林、白色に変じて猶(な)ほ白鶴の如(ごと)し」とある。

[藤井教公]

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世界大百科事典(旧版)内の鶴林の言及

【サラソウジュ(沙羅双樹)】より

…【緒方 健】 ところで,仏教における伝説では,釈迦の入滅に際し,その四方に2本ずつ生えていた8本のシャーラ樹のうち,各対のそれぞれ1本が枯れたといい,これを〈四枯四栄〉という。また入滅にあたりこれら8本が白く変わったともいい,釈迦入滅の地を白鶴の色にたとえて〈鶴林(かくりん)〉と呼ぶ。この伝説は日本にも仏教とともに早くから伝えられ,《平家物語》の冒頭でも,〈無常〉を象徴するものとして〈娑羅双樹〉が登場する。…

※「鶴林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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