鹿を馬(読み)しかをうま

精選版 日本国語大辞典 「鹿を馬」の意味・読み・例文・類語

しか【鹿】 を 馬(うま)

(中国、秦の趙高が、自分権力をもって、皇帝に対して鹿を馬と言って押し通したという「史記‐秦始皇本紀」の故事から) 誤りを強引に押し通すこと。また、人をだまし愚弄することにいう。鹿を指して馬と言う。鷺(さぎ)を烏。
能宣集(984‐991)「なしといへばをしむかもとや思ふらんしかやむまとぞいふべかりける」
源氏(1001‐14頃)須磨「かのしかをむまといひけむ人の、ひがめるやうに追従するなど、あしき事ども聞えければ」

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故事成語を知る辞典 「鹿を馬」の解説

鹿を馬

筋の通らないことや間違ったことを、権力を使って強引に押し通すことのたとえ。

[使用例] せきは鹿を指して馬という。きんは馬を指して牛という。馬鹿の名称、これより変じて馬牛となるべし[井上円了*欧米各国政教日記|1889]

[由来] 「史記―始皇紀」に出て来る話から。紀元前三世紀の終わり、しん王朝の時代の中国でのこと。政治実権を握ったちょうこうという大臣が、皇帝に鹿を献上して、「これは馬です」と言いました。皇帝は笑って、「大臣の間違いだろう、『鹿をいて馬とす(鹿のことを馬だと言っているよな)』」とまわりの者に問いかけましたが、ある者は押し黙り、ある者は馬だと答える始末。趙高はこうやって、自分の言うことを聞く者を見分け、そうでない者には罪を着せてしまったのでした。このように政治が乱脈を極めた秦は、このあと、しばらくして滅亡することになります。

〔異形〕鹿を指して馬と言う。

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ことわざを知る辞典 「鹿を馬」の解説

鹿を馬

間違ったことを権力をもって強引に押し通すこと。人を愚弄して白を黒といい張ること。

[解説] 中国、秦の趙高が、始皇帝死後じょうしょう天子を助ける大臣)となって権力を握り、みずから擁立した幼少の皇帝に、鹿を献上し、それを馬だといって押し通したという「史記―秦始皇本紀」の故事によることば。

[類句] 鷺を烏

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