麦こがし(読み)むぎこがし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「麦こがし」の意味・わかりやすい解説

麦こがし
むぎこがし

香煎(こうせん)の一種麦焦がしとも書き、麦香煎、こがし、煎(い)り麦、麦のはったいなどともいう。大麦を煎って焦がし、石臼(いしうす)でひいて粉にしたもの。これに砂糖を混ぜ、熱湯や水で溶いて食する。また菓子の材料として用いられ、打ち物には群馬県館林名物の麦落雁(らくがん)などがあるほか、黒糖でつくった駄菓子落雁の「麦こがし」もある。関東では普通「麦こがし」といい、関西では「はったい」(糗)とよぶ。1587年(天正15)10月、豊臣(とよとみ)秀吉北野に大茶会を催した際、茶がなければ「こがしにても苦しからず」と高札したのは、こがしにシソ柑橘(かんきつ)の皮を粉末にして加えた嗜好品(しこうひん)のことであった。昔は新麦の時期にはったい売りが回ってきた。

[沢 史生


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「麦こがし」の意味・わかりやすい解説

麦こがし
むぎこがし

麦焦がし,麦粉菓子とも書く。大麦,裸麦を炒ってひき粉末にしたもの。関西でははったい粉,炒り粉とも呼ぶ。砂糖を混ぜて粉末のまま食べたり,熱湯や牛乳を注いで練って食べたりする。一般には間食として食される。香ばしい香りが特徴で,和菓子落雁の材料にもなる。安土桃山時代から湯水に点じてこがし (今日の香煎〈こうせん〉) として好まれた。

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改訂新版 世界大百科事典 「麦こがし」の意味・わかりやすい解説

麦こがし (むぎこがし)

香煎(こうせん)

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栄養・生化学辞典 「麦こがし」の解説

麦こがし

 →香煎

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世界大百科事典(旧版)内の麦こがしの言及

【オオムギ(大麦)】より

…イネ科の越年草で,生産量がコムギ,イネ,トウモロコシに次ぐ世界第4位の穀物である。六条オオムギHordeum vulgare L.と二条オオムギH.distichum L.に大別される。
[形状]
 茎は中空で直立し,高さ約1mになる。茎葉はコムギによく似ているが,葉はやや短くて堅い。4~5月ごろ,茎頂から穂を出す。穂の各節に三つずつ並んで小穂がつき(イラスト),それらが互生するので,穂には粒が縦に6列に並ぶ。…

【香煎】より

…麦こがしなど,麦や米をいって粉末とした〈こがし〉(〈はったい〉〈はったい粉〉とも)を指すこともあるが,一般にはそうしたこがしにサンショウ,シソ,陳皮(ちんぴ)(ミカンの皮)などの粉末と少量の塩を加えたものをいい,湯を注いで茶のように飲用する。江戸時代以前から大唐(たいとう)米と呼ばれた赤米(あかごめ)を主材料としてさかんに用いられたもので,《犬筑波集》には〈日本のもののくちのひろさよ たいとうをこかしにしてや飲ぬ覧〉の句が見られる。…

※「麦こがし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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