昔話。〈おむすびころりん〉〈鼠の餅つき〉とも呼ばれる。善良な爺が,取り落としただんごや握飯や焼餅を追いかけていくうちに穴に入り,地中の鼠の浄土に至る。そこには歌をうたいながら,多くの鼠が餅をついている。爺は歓待されて土産に餅,金銀,呪宝などを授けられる。それをうらやんだ婆が,わざとだんごなどを転がして鼠の浄土に行く。歌をうたう鼠を猫の鳴き真似をして驚かす。するとすべてが消え去り,婆は何も得られず地中に埋もれる。ここには人真似をする者が常に懲罰を受けるという日本の昔話における基本的な理念が示される。爺を浄土に導くだんごや握飯などは,ハレの日に用意される食物であり,鼠が穀霊神としてまつられる例があることは,注目すべきである。現に土間の隅や囲炉裏端の穴,米倉の鼠穴が,浄土や常世(とこよ)に通じていると信じられている地方もある。この昔話の冒頭が笑話化されて〈団子浄土〉とも呼ばれる。
執筆者:野村 敬子
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