クチベニタケ(読み)くちべにたけ

改訂新版 世界大百科事典 「クチベニタケ」の意味・わかりやすい解説

クチベニタケ (口紅茸)
Calostoma japonicum Henn.

担子菌類腹菌目クチベニタケ科のキノコ山道赤土のがけに生えることが多い。頭と茎の2部にわかれ,茎は土に埋まり頭だけを地面に出す。頭部球形の袋状,中に白い粉のような胞子をみたし,直径1cmほど,袋は柔らかい皮質,表面に細かい粒つぶをおびて白っぽく,頂端に紅色に縁どられた星形に裂けた口をあけて胞子を出す。茎はあめ色で軟骨質の細いひもを束ねた形をしており,長さ1.5cmほど。胞子は楕円形,無色,表面は細かい網目状の隆起をおびる。日本特産で,本州から沖縄まで分布する。ふつう日本産のクチベニタケ属には他に西表島産で胞子が円錐形のいぼでおおわれるネッタイクチベニタケC.junghuhnii(Müll.)Mass.と屋久島産で胞子が台形のいぼでおおわれるミナミクチベニタケC.sarasini(Henn.)v.Over.がある。ともに東南アジアにも分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クチベニタケ」の意味・わかりやすい解説

クチベニタケ
くちべにたけ / 口紅茸
[学] Calostoma japonicum P. Henn.

担子菌類・腹菌類、ニセショウロ目クチベニタケ科のキノコで日本特産。山道の路傍の裸地やコケに混じって生える。地上には丸い頭部だけを出し、柄は地中に埋まる。頭部は球形で、径1センチメートル内外、表面は白っぽく、頂端に紅色に縁どられる星形の裂け目がある。内部には胞子が白い粉の塊のように充満する。地中の柄は飴(あめ)色の細い紐(ひも)を束ねたような形で軟骨質、高さは1.5センチメートルほどになる。近縁種にタイワンクチベニタケC. junghunii (Müll.) Mass. とミナミクチベニタケC. sarasini (Henn.) Over. がある。前者は西表(いりおもて)島、台湾、ヒマラヤに、後者は東南アジアと屋久(やく)島に分布する。

[今関六也]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クチベニタケ」の意味・わかりやすい解説

クチベニタケ(口紅茸)
クチベニタケ
Calostoma japonicum

担子菌類腹菌目クチベニタケ科のキノコ。直径 1cm前後の球形または亜球形の頭部と,数本の根のような部分とから成る。全体の高さは2~3cm。頭部の頂はやや突出して星形に裂け,小孔を生じ,その縁が朱色になり赤い唇を想起するので,この名がある。表面の色は飴色。胞子は子実体の内部に生じ,熟後,頂部の小孔から出る。夏秋に,山地の露出した地面に群生する。日本特産種。

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