H-IIロケット(読み)エイチツーロケット(その他表記)H-II Launch Vehicle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「H-IIロケット」の意味・わかりやすい解説

H-IIロケット
エイチツーロケット
H-II Launch Vehicle

宇宙開発事業団 NASDA(→宇宙航空研究開発機構 JAXA)が開発した衛星打ち上げ用ロケット。H-Iロケットの後継機で,主要な技術すべてが国内で開発された。液体酸素液体水素によるロケットエンジンを 2段式ロケットの両段に備えている。1994年から 1999年までに 7機が打ち上げられ,10個の衛星を地球周回軌道に投入した。
H-IIロケットを全体にわたって再設計し,海外の安価な製品を利用,構造の簡素化などにより打ち上げ費用の削減と信頼性の向上をはかったものが H-IIAロケットである。静止トランスファー軌道への打ち上げ能力は 3.8~5.8tで,H-IIと同等から約 1.5倍の能力である。2001年夏に試験機 1号機が打ち上げられて以来,16回中 15回の打ち上げに成功。なお 2007年の 13号機から,打ち上げ作業を含めて H-IIA打ち上げ関連業務のほとんどが民間企業である三菱重工業に移管された。また商業打ち上げの受注活動も,三菱重工業が行なうことになった。
日本は 1997年から国際宇宙ステーション ISSへの物資補給を行なう宇宙ステーション補給機 HTVの計画を進めてきた。HTVの質量当初 15tと設定され,H-IIA標準型では打ち上げることができなかったため,1996年から H-IIAの増強型として H-IIBロケットの開発を進め,2009年9月に 1号機を打ち上げた。H-IIBは HTVだけでなく,静止衛星の打ち上げも想定している。静止トランスファー軌道への投入能力は 8tで,商業打ち上げで大きなシェアをもつヨーロッパ宇宙機関 ESAのアリアンVロケットに近い能力を有する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android