インターネットの住所や電話番号に相当するドメインネームやIPアドレスなどを管理するアメリカの非営利民間法人。英語のThe Internet Corporation for Assigned Names and Numbersの略称で、アイキャンとよばれる。本部はカリフォルニア州に所在。世界各地の代表20人による理事会を中心に、ドメインネーム、IPアドレスや自律システム番号、プロトコルポート番号やパラメータ番号などのインターネット資源の割当てや調整などを担当。DNS(ドメインネーム・システム)の根幹をなすサーバーの運用やその技術的運営、ポリシーの策定などを担っている。理事長は黎明(れいめい)期からインターネット開発に携わったスティーブ・クロッカ-Steve D. Crocker(1944― )で、職員数は約350人。発足以来、アメリカ商務省の監督下にあったが、2016年10月にアメリカ政府が監督権限を手放し、運営当事者による自治組織となった。
インターネットはアメリカ国防総省の研究から誕生したため、ドメインネームなどの管理は、はじめ国立科学財団(NSF:National Science Foundation)から委託された南カリフォルニア大学内の組織IANA(Internet Assigned Numbers Authority)が担当し、その後民間企業ネットワーク・ソリューションズ社が担当していた。しかし1990年代後半にインターネットが急速に普及したため、1998年10月にICANNが設立された。ICANNは海外に開かれた中立・公平な組織を標榜(ひょうぼう)していたが、アメリカ商務省国家電気通信情報局(NTIA:National Telecommunications and Information Administration)の監督下にあった。2013年、アメリカ政府が諜報(ちょうほう)活動の一環として個人のインターネット利用記録を収集していると元アメリカ中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデンEdward J. Snowden(1983― )が暴露(スノーデン事件)したため、中国、ロシア、ブラジルなどの新興国から「インターネットのアメリカ支配」に対する強い批判がおきた。これを機に世界規模の中立機関にすべきであるとの機運が高まり、ICANNはアメリカ商務省の管理を離れ、世界各地のユーザー団体や技術専門家による自主管理団体となった。
[矢野 武 2017年4月18日]
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
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