同性愛者のレズビアン=L、ゲイ=G、両性愛者のバイセクシュアル=B、生まれながらの性別と自認する性別が異なるトランスジェンダー=T、性自認や性的指向が特定の枠に属さない人や分からないクエスチョニング=Qなどの性的少数者らを指す表現。アジアの国・地域では台湾が2019年に初めて同性婚を合法化した。(北京共同)
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L=レズビアンlesbian、G=ゲイgay、B=バイセクシュアルbisexual、T=トランスジェンダーtransgender、さらにQ=クイアqueer(既成のジェンダーやセクシュアリティの区分に当てはまりたくない人)/クエスチョニングquestioning(自身の性的アイデンティティを決めかねている人)、+=その他、といったそれぞれの性的カテゴリーを列挙した頭字語。日本ではしばしば性的少数者の「総称」とされることが多いが、性的少数者であることを示そうとしてある人物を「LGBTQ+である」とよぶことは、ある人物を「老若男女である」とよぶことに等しく、その当事者個人がすべてのカテゴリーに属するわけではないので誤用である。
1969年のアメリカ・ニューヨーク市での「ストーンウォールの暴動」以降、「ゲイ」という呼称が、それ以前の「性的逸脱/倒錯者」とされた人々全般への呼称から離れ、性的少数者たちの「アイデンティティ政治」の立脚概念として流通し始めた。その際に「ゲイ」は性的少数者のなかで多数を占める(男女の)同性愛者全体をさすことばへと変容し、そこから、女性であることの差別構造に対するフェミニズム的気づきによって「レズビアン」が独立。また、ゲイ男性と比べて埋没しがちなレズビアンの可視化を進めるために「L」を先頭に出した「LG」呼称がより一般化し、「バイセクシュアル」も名のりをあげて「LGB」という頭字語が成立した。さらに、1980年代後半までには「T」を加えた「LGBT」が流通するようになった。
ただし、これもLGBTの四者に限るものではなく、当時はまだ明確な言語化に至らなかった非異性愛者、非シスジェンダーの周縁(いわゆる「Q+」で表象される人々)も広く含む意味で使用された。
もっとも、性的少数者の人権運動が大衆化したアメリカでも、1990年代までは当事者コミュニティのなかでそのそれぞれが平等に尊重されていたわけではなく、バイセクシュアルは「カミングアウトできない同性愛者」という誤解があったり、トランスジェンダーに関しては、しばしばとくにMtF(男性から女性)のトランス女性が女装のドラッグ・クイーン(近年の当事者コミュニティでは、薬物の「ドラッグdrug」との混同を避けるために「ドラァグdragクイーン」とする表記が多い)と混同されたりした時代もあった。
また、「LGB」は性的指向における少数者層、対して「T」は性自認(ジェンダー自認)における少数者層であり、現在でも憎悪犯罪の最大の被害者層である点からも、両者を頭字語で同列に扱うべきではないとする議論もある。
一方、「+」として表示されるさらなる少数者集団の可視化も企図して、「I=インターセクシュアルintersexual」「A=アセクシュアルasexual/アロマンティックaromantic/アジェンダーagender」「P=パンセクシュアルpansexual」「N=ノンバイナリーnonbinary/ノンコンフォーミングnonconforming」などの頭字が続くこともある。それらのなかにはことばとして未熟な概念もあり、呼称はなお流動的である。
なお、「Q」の「クイアqueer」という英単語は伝統的に、日本語でいうなら「変態」「オカマ」に相当する強い侮蔑の意味がもともとあるので、自称する場合以外での使用には注意が必要である。
[北丸雄二 2022年9月21日]
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