日本大百科全書(ニッポニカ) 「少数者集団」の意味・わかりやすい解説
少数者集団
しょうすうしゃしゅうだん
minority group
少数集団ともいう。小集団small groupとは別の概念。本来は、多数派に対する少数派、および、全人口の過半数以下、または相対的に人口数の少ない集団をさし、アメリカ合衆国内の日系人、日本のアイヌ系日本人や天皇一族、同性愛の人々などがそれである。しかし1930年代以降の社会科学では、人口数の多少よりはむしろ、ある一つの社会のなかで、肉体的または文化的特徴の違いを理由として、他集団とは区別されて不利に扱われる集団をさすようになった。植民地的状況下の有色人がその適例である。しかしこの場合、有色人は普通その社会の全人口の過半数を占めており、「少数者」という表現がしばしば語義の混乱を招いた。
そこで、最近は用法が限定されてきている。すなわち、優勢な集団(支配集団)と劣勢な集団(従属集団)が上下関係に置かれているある一つの社会において、人口が全人口の過半数以下であり、各集団ごとに決まっている出自の規則によって集団構成員の資格が決められ、かつ集団アイデンティティを共有して統一性を多かれ少なかれ保有している集団が、肉体的または文化的特徴の点で実際にまたは想像のうえで違うことを理由にされて、支配集団によって差別され従属させられる場合、これを少数者集団という。こうした特徴の差異に対応して、少数民族、人種的少数者集団、言語的少数者集団、宗教的少数者集団、政治的少数者集団などが存在する。少数者集団の抱える諸問題は、階級、国家、中央集権制、官僚制、国際関係、人口、人権、偏見などと結び付いており、その解決は人類史の大きな課題である。
[鈴木二郎]
『L・リントン編、池島重信監訳『世界危機に於ける人間科学 下巻』(1975・新泉社)』