火星に観測機器を軟着陸させ,火星に生命が存在するか否かの調査を主目的としたNASA(ナサ)による火星探査計画。バイキングVikingは用いられた探査機の名称。1号と2号があり,いずれも着陸船と火星を周回する軌道船からなり,着陸船の重量は576kg,軌道船は2324kg。1号は1975年8月打ち上げられ,76年7月に火星に到着,火星周回軌道に入った後,7月20日軌道船から分離された着陸船が火星大気に突入,パラシュートと逆噴射ロケットで減速し,クリュセ平原(北緯22°27′,西経48°00′)に軟着陸した。岩の多い赤茶色の大地とピンク色の空のパノラマ写真を電送,また大気の95%が炭酸ガスで,窒素2.7%,そのほかわずかなアルゴン,酸素,水蒸気からなること,気圧が地球の約1%,気温が-30℃(昼)から-80℃(夜)程度であること,表土の組成がケイ素15~20%,鉄14%のほかカルシウム,アルミニウム,硫黄,チタン,マグネシウム,セシウム,カリウムなどであることなどを明らかにした。生物の存在に関しては,自動シャベルによって火星表面から採取した砂を着陸船内部のカプセルに入れ,光合成,新陳代謝および呼吸の3種類の実験を行った。いずれの場合も反応が現れたが,これらは生物による反応ではなく,単なる化学反応と判明,さらに砂の中に有機物質が含まれていないこともわかり,火星の生命存在について肯定的な答えは得られなかった。2号は1975年9月打上げ,76年9月3日ユートピア平原(北緯47°89′,西経225°86′)に軟着陸,1号と同様の実験を行った。82年3月まで続けられた軌道船と着陸船からの写真電送は,延べ600万枚以上に達した。
→火星 →惑星
執筆者:上杉 邦憲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
火星の大気とその表面を直接調べること、とくに生命の存在に関して、生物学的、化学的、および環境学的な調査を行うことを目的としたアメリカの惑星探査計画。1975年8月にバイキングViking1号機、9月に2号機が打ち上げられ、火星表面に軟着陸して人類初の火星表土採取に成功した。探査機はオービタ(軌道船)とランダー(着陸船)とからなり、オービタはランダーを火星周回軌道に運び、搭載したテレビカメラで適当な着陸地点を探し、ランダーが着陸したのちは、ランダーが火星上で行った実験データを地球へ送るデータ・リレー衛星の役目を果たした。1号機は1976年7月20日にクリュセ平原に、2号機は9月3日にユートピア平原に着陸した。ランダーはガスクロマトグラフィー装置、生命検出装置、土壌掘削用のロボット腕、蛍光X線スペクトロメーターなどの装置をもち、大気や土壌の化学分析、生命探査に関する炭素同化実験、ラベル放出実験、ガス交換実験、および有機物の質量分析実験などを行った。その結果、これら二地点での実験に限っていえば、生命の存在に関して確たる証拠はみつからなかった。
[輿石 肇・岩田 勉]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…地球を調べるためアメリカで打ち上げられた探査衛星ランドサットのシリーズは可視,近赤外の帯域の電磁波を電子的に観測したが,有人衛星では通常のカメラも用いられた。同じくアメリカの火星探査バイキング計画では無人で作動する土壌分析装置からの分析結果が地球に送られた。電波そのものの観測も有力な手段で,地球表面あるいは宇宙からの自然発生的電磁波を調べ対象物を知ることもできる。…
※「バイキング計画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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