program evaluation and review techniqueの略。1958年にアメリカ海軍がポラリスミサイルの計画を完成させるために開発した手法で,土木建設工事の日程管理,研究開発のプロジェクト管理など,膨大な数の作業を含む日程計画の作成,調整などを行う手法である。
PERTでは仕事全体を図のような矢線図と呼ばれるネットワーク(あるいはグラフ)の形に表す。ネットワークにおけるそれぞれの矢線は作業に対応し,矢線の向きは作業の順序関係を表す。矢線図の頂点を結合点と呼び,結合点番号を付与し,結合点iからjに矢線が向かう場合には作業iが作業jに先行することを意味する。番号1の点を始点とし,最大の結合点番号を有する点を終点とする。それぞれの作業の所要日数が対応する矢線の上に図のように与えられているとする。結合点iの最早結合点時刻tieはその結合点を最も早く出発できる時刻とし,また最遅結合点時刻tilは仕事全体を完了するのに要する時間(ふつう工期と呼び,図の例ではt5eに相当する)に対してその時間に完了させるためにその結合点を遅くとも出発しなければならない時刻を表す。ここでt1e=0とし,tieを順次計算し,次にt5e=t5lをもとにしてtilを終点から始点に向かって順次計算することができる。図にはそれぞれの結合点iにtieを上段にtilを下段に表示している。
矢線図において始点から終点に至る最も長い経路をクリティカルパスと呼ぶ。図の例ではクリティカルパスは1→2→4→5に対応する。クリティカルパス上の作業が少しでも遅れると,仕事全体の工期に対応する最長経路の長さが延びる。したがって全体の工期を短縮する場合にはクリティカルパス上の作業を短縮することが必要となる。
PERTは仕事全体を表す矢線図からクリティカルパスを見いだし,それに含まれる作業を重点的に管理することによってより効率的なスケジュールあるいは日程計画を作成しようとするものである。実際には上に述べたような単純なネットワークの解析ばかりでなく,矢線図の要素(たとえば作業の所要日数)に確率概念を導入したもの,あるいは時間的要素に費用データを加えることによって日程,費用の両面から効率的なスケジュールを得ようとするもの,あるいは人員,設備,資金などの各種資源の制約をも考慮した上での有効なスケジュールを求めるものなど数多くの拡張が考えられている。
PERTが作業全体の工期に注目し,できるだけ効率的な日程計画を作成することを目的としているのに対して,クリティカルパスを対象とする分析手法であるCPM(クリティカルパスメソッドcritical path method)は費用に注目し,できるだけ少ない費用で作業を終了することを目的としている。各作業に対する標準所要日数を単位日数だけ短縮するのに要する費用増加率が与えられた時に,作業全体をある工期以内に終了するのに要する総費用を最小にする日程計画を求めるのが,CPMである。
ある作業の集合に対して,それに含まれる各作業の所要日数を短縮することによって工期を短縮できる時,そのような作業の集合をカットと呼ぶ。カットのうちでそれに含まれる作業の費用の総和が最小となるものを最小カットと呼ぶことにすると,最小カットに含まれる作業の所要日数を単位日数だけ短縮することによって全体の工期を単位日数だけ最小費用で短縮することができる。最小カットを求めるにはネットワーク理論の代表的な定理である最大フロー最小カット定理を適用し,ラベリング法を用いることができる。この操作を繰り返すことによって工期の短縮に伴う費用増,したがって作業全体に対する工期と総費用との関係が得られる。またCPM問題は線形計画法を用いて定式化することもできるが,この場合には作業全体の工期をパラメーターとするパラメトリック線形計画問題となる。
執筆者:大山 達雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
program evaluation and review techniqueの略。プロジェクトの進行を数学的に表現し、しばしばコンピュータを利用して管理を実施する、日程計画・管理のための技法の一種。1958年アメリカ国防総省でポラリス潜水艦用ミサイル開発のスケジュールを管理するために初めて適用されたことで有名である。PERTにおけるプロジェクトとしては研究開発、構造物の建設、催し物の開催準備など、さまざまなものが対象となる。プロジェクトを最小単位の要素作業に分け、要素作業間の実行順序を矢線図(アローダイヤグラムarrow diagram)に表現する。そして矢の長さと要素作業の所要予定日数(または時間数)を対応させる。予定日数に不確定要素を含む場合は、最長・最短の見積りと、確率分布を与える。PERTでは、この矢線図の情報に基づいて、プロジェクト全体の所要日数またはその確率分布、日程の制約となっている要素作業、その他の要素作業の余裕度などをコンピュータにより計算し、緊急度の高い作業を優先的に進捗(しんちょく)させるように管理する。建造物の建設などにPERTはよく利用されており、大規模なダムの建設などには数千の要素作業をもった矢線図が必要といわれている。
PERTの拡張としては、作業が集中するときどのような資源をどれだけ必要とするか(土木作業ならダンプカーやクレーンなど)、資源に制約がある場合は日程をどのように組むのがいちばん遅れを少なくできるかを計画する資源制約型PERT、プロジェクト全体の日程を短縮したい場合、どの要素作業にどれだけ上積み経費をかけて作業日数を短縮すればよいかなどの計画を行うCPM(critical path method)などがある。
[小野勝章]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…そのような場合には,工事全体を終了するのに要する総所要日数を最も少なくするような効率的な日程計画を,ガントチャートのみで作成することは,非常に難しい。そこでPERT(パート)と呼ばれる手法を用いてコンピューターで解くことが行われる。PERTでは,工事などの作業手順をグラフ(PERTでは矢線図という)の形に表現した上で,総所要日数が最小となるようなスケジュールをグラフ上で求め,それをもとに作業手順の調整,管理を行うことを目的としている。…
※「PERT」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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