日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリティカルパス」の意味・わかりやすい解説
クリティカルパス
くりてぃかるぱす
critical path
研究、開発、製造、インフラ整備などのプロジェクトで、開始から終了までの所要時間を決定する一連の工程の組合せをさす経営用語。限界工程、臨界工程、最長経路などと訳される。前工程が終わらないと次の工程に進めないケースでは、プロジェクト全体の所要時間は、こうした従属関係にある一連の工程で決まる。この一連の工程のなかで、もっとも長い時間を要する工程の組合せがクリティカルパスとなる。プロジェクト推進にあたっては、クリティカルパスをいかに短くしコストを圧縮するかという観点で管理がなされる。
クリティカルパスを用いて工程全体を管理する手法(クリティカルパス法)は、アメリカの化学会社デュポンが1958年、化学プラントの建設時間とコストを抑える目的で開発した。なお、同様のプロジェクト工程の分析手法としては、アメリカ海軍が1958年に潜水艦発射弾道ミサイル「ポラリス」プロジェクトのために開発したPERT(Program Evaluation and Review Technique)法がある。
なお医療・福祉分野では、質の高い医療や介護サービスを患者に提供する目的で作成する診療計画をさす用語として使われている。この場合、クリニカルパスともいう。癌(がん)、脳卒中などの患者に対し、数年から10年程度の診療計画をつくり、患者がかかりつけ医以外の医療機関、リハビリテーション機関、介護機関、薬局・薬剤師などを利用する際に、質の高い診療・検査を受けられるようにするねらいがある。診療・介護・リハビリ機関などが継続してきめ細かな診療サービスを提供する地域連携体制の意味としても使われる。
[編集部]