知恵蔵 「Ustream」の解説
Ustream
サービス開始以降は、政治やスポーツ、音楽など様々なジャンルの動画が放送・視聴されている。利用者数は飛躍的に増加しており、現在は月間5千万人以上の視聴数を誇る。黒人初の米国大統領バラク・オバマ氏の就任式(09年1月20日)、ゴルフ界のスーパースターであるタイガー・ウッズ選手のスキャンダル発覚後初の公式会見(10年2月19日)などが生中継された。
動画共有サイトとして広く普及しているYouTubeと同様に、高額な資金や高度な技術を用いることなく、動画を制作・放送できるのがUstreamの強み。個人に限らず、豊富な資金力を持たない企業・団体も自由に自らがメディアとなれ、ブランディングにも利用できる。全日本剣道連盟は、民生用の比較的安価な機材を利用して、全日本選抜剣道八段優勝大会(10年4月18日)をUstreamで生中継した。
YouTubeとの違いは、リアルタイムで動画を放送できること。あらかじめ映像を編集しなければならないYouTubeに対して、バッファリング・エンコーディングで多少の遅延は生じるものの、Ustreamは編集を必要としない。短文をつぶやくTwitterと連携し、リアルタイムで配信される動画について、より多くの人に伝えられるのもUstreamならではの特徴だ。
リアルタイムで動画を放送するUstreamは、ニコニコ生放送に類似している。しかし、ニコニコ生放送を利用するには会員登録が必要で、放送には料金を支払わなければならない。画面に広告が表示されるものの、Ustreamは放送・視聴ともに会員登録を必要とせず、無料で利用できる(カスタマイズや放送による利潤などを求めるユーザーに対しては、09年2月よりWatershedと呼ばれる有料サービスを提供)。
2010年4月にはUstreamの日本語版サイトが開設された。運営会社はソフトバンクで、トークショーやイベントなどが行える「USTREAM スタジオ汐留」(10年3月28日オープン)をはじめ、USTREAMスタジオも順次開設している。将来的には全国に展開していく計画。
ソフトバンクは、株式非公開企業であるユーストリーム社に出資もしている。10年1月29日時点で約2千万ドル(約18億円)を出資しており、出資比率は13.7%。11年7月までには約7千500万ドル(約67億5千万円)とし、同30%強にまで高めていくという。ソフトバンクはユーストリーム社の筆頭株主となる見込み。
(西山和敏 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報