有名ブランドの偽造品や海賊版ソフトなど知的所有権を侵害する製品やサービスの流通を規制・防止する初の国際条約。英語名のAnti-Counterfeiting Trade Agreementの略で、「アクタ」ともいう。日本では「模倣品・海賊版拡散防止条約」「偽造品の取引の防止に関する協定」などと訳される。ブランド品、アニメーション、音楽DVD、ゲームソフトから医薬品、サービスまで幅広い分野の知的所有権保護を目的としており、インターネット上の著作権も含まれる。国際的な保護の枠組みには世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)があるが、中国やインドなど新興国で氾濫(はんらん)する模倣品や海賊版の歯止めにはなっていない。この反省から、2005年(平成17)に日本の首相小泉純一郎がイギリスで開かれた第31回主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)でACTAの必要性を提唱した。2008年から主要国が交渉に入り、2011年10月に日本、アメリカ、韓国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、モロッコの8か国が条約に署名し、2012年1月にはヨーロッパ連合(EU)のうち22か国、同年7月にメキシコも署名した。日本は2012年9月に批准、計6か国の批准で条約は発効することになっているが、2013年6月時点で未発効である。なお中国、インド、ロシアなどは参加していない。
ACTAは、インターネットやデジタルコピーの普及に対応し、デジタル知的所有権の保護を強く打ち出している。条約を批准すると、その締約国では、有料サイトの制限を解除するソフトなどの製造、頒布が違法となるほか、インターネット接続業者は著作権を侵害した疑いのある者の情報を著作権者に開示するよう義務づけられる。市場価格などを参考に損害賠償額を算定できる基準も盛り込まれている。
一方、ACTAは自由なネット社会の規制につながるとして反対する動きが世界的に広がっている。とくに高失業率などの社会的不満を抱えたポーランド、チェコ、スロベニアなどの東欧では、インターネットを「生きがい」とする若者を中心に反ACTAデモが相次いで発生、EUのヨーロッパ議会は2012年7月、ACTAを批准しないことを決めた。このため日米欧の主要国が模倣品や海賊版の拡散防止に足並みをそろえようとの当初構想は修正を余儀なくされている。
[編集部]
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
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