化学辞典 第2版 「D-パントテン酸」の解説
D-パントテン酸
パントテンサン
D-pantothenic acid
(R)-N-(2,4-dihydroxy-3,3-dimethylbutanoyl)-β-alanine.C9H17NO5(219.23).ビタミンB複合体のなかの一つ.R.J. Williams(1933年)が,米ぬかから酵母の増殖因子として単離し,動物,植物組織に広く分布していることからpantothenic acidと命名した.のちに,パントテン酸は乳酸菌の増殖因子,ニワトリの皮膚炎予防因子,さらにシロネズミの発育因子であることなどが判明した.D(-)-パントラクトンとβ-アラニンを縮合させて製造される.油状.+37.5°(水).水,アルコール類,ジオキサン,氷酢酸に可溶,ベンゼン,クロロホルムに難溶.塩類は結晶し,カルシウム塩は分解点195~196 ℃.酸,アルカリおよび熱に不安定である.動物,植物組織内では補酵素A(CoA)の構成成分としてアシル基転移に関与し,糖質の代謝や脂質合成など,多くの代謝過程に重要な役割を果たしている.L-パントテン酸には生理活性はない.このビタミンの基本的機能は細胞の代謝に関係しており,欠乏症としては,成育の停止,体重減少,脂質代謝障害,神経系,消化器系,副腎,生殖機能などの障害,感染に対する抵抗力,および解毒作用の低下などである.[CAS 79-83-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報