掘抜き井戸(深井戸)を掘ると地下水が地表上に自噴する地域。水を透(とお)しにくい不透水層に挟まれた透水層が、一方に傾斜した同斜構造をしている地域や盆地構造を呈しているところでは、透水層中の地下水が被圧されているため、掘抜き井戸を掘ると地下水が自噴する。自噴しなくても、地下水位が上昇する場合も含めて、そのような構造をもっている地域を鑽井盆地と称する。英語のartesian basinはフランスの旧地方名であるアルトアArtois地方に由来するもので、この地方には古くから掘抜き井戸があって自噴していた。
地下水を含む透水層(帯水層)が地表に露出しているところで、雨水が浸透して地下水が補給される。この範囲を被圧地下水の涵養(かんよう)区域とよぶ。オーストラリアの大鑽井盆地がもっとも有名で、その被圧地下水は東部のオーストラリア・アルプス山地に降った雨水によって涵養される。この大鑽井盆地の地下水がヒツジの飲料水として利用され、大牧羊地域が出現した。アメリカのグレート・プレーンズにも大鑽井地域があり、日本でも各地に分布するが、千葉県房総丘陵の北西斜面も同斜構造で、市原市を中心に被圧地下水が大量に得られ、京葉工業地帯の工業用水源となっている。
[市川正巳・村田明広]
…自噴井は初めフランスのアルトアArtois地方で掘られたので,アーテジアンartesianと呼ばれ,掘抜井戸ともいわれていた。自噴性の被圧地下水をもつ盆地を鑽井(さんせい)盆地と呼び,オーストラリアの大鑽井盆地や千葉県の上総地方はその典型例である。自噴井は三角州や扇状地の末端部でもみられる。…
※「鑽井盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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