日本大百科全書(ニッポニカ) 「SHF」の意味・わかりやすい解説
SHF
えすえいちえふ
super high frequencyの略称。国際電気通信連合(ITU)憲章による無線通信規則に定められている電波の周波数区分の一つで、その範囲は3ギガヘルツを超え、30ギガヘルツ以下の周波数帯をいう。これを波長で表せば10センチメートルから1センチメートルの範囲であり、センチメートル波に区分される。一般には、この周波数帯を極超短波とよび、また、マイクロ波に含めてよぶこともある。SHFはセンチメートル台の波長範囲にあるのに、一般にマイクロ波とよばれている帯域よりも短波長の領域を表すので紛らわしい。しかし、マイクロ波という呼び方はあくまでも世界的に広がった通称であるので、法律上には存在しない呼び名として理解するほかはない。
SHFの技術は、極超短波(UHF)よりもさらに波長の短い高周波を発振させる分割陽極マグネトロン(磁電管)、クライストロン(速度変調管)、進行波管(TWT:traveling wave tube、またはTW管)などの電子管の技術の進歩によって発展した。
SHFはパラボラアンテナ(回転放物鏡アンテナ)を使用して、効率のよい無線通信を行う一方、近距離の伝送には導波管という矩形(くけい)または円形の断面をもつ中空の金属管を使用して効率よく伝送することができ、その先端に放射器を形成して電波として放射することもできる。UHF帯(デシメートル波)とともに背景雑音の少ない周波数帯であり、広帯域使用も可能であるため、衛星通信の通信周波数としてのみでなく、地球観測衛星などによるリモート・センシング(遠隔探査)において、観測対象から自然放射されるマイクロ波エネルギーの観測周波数(減衰により水蒸気の存在量を測定)として最適な周波数帯である。
[石島 巖]