電波を利用上の便宜から波長によって分類したものの一つ。波長の範囲は10メートルから1メートルまで、周波数の範囲は30メガヘルツから300メガヘルツまでの電波を慣用的に総称していう。電波法施行規則に定められた周波数帯の略称ではVHF帯(メートル波)に相当する。
この周波数帯の電波は、ほとんどの電離層(電離圏)を突き抜けるので回折することがなく、直進性が強いことから、地上波通信での用途は、見通し距離(近距離)の通信に限られる。地上での見通し外の距離では、回折波や散乱波が到達しないので強度が急激に減衰する。しかし特別な気候状態のときに、大気の屈折率が大きく減少する層ができることがあり、そこを超短波の電波が通過するとき、電離層を突き抜けずに地表波として遠方まで伝播(でんぱ)することがある。これをラジオダクトという。また、夏季の昼間に、110キロメートルほど上空に超短波をよく回折する電離層(スポラジックE層)が発生し、これによって回折した電波が遠距離まで到達することがある。
超短波はFM(周波数変調)ラジオ放送、船舶FM無線電話(国際VHF)、航空機用AM(振幅変調)無線電話、防災行政無線、消防無線、列車無線、警察無線などに使用される。以前は宇宙通信にも使用されていたが、1970年以降はほとんどがさらに高い極超短波帯に移行している。これは、超短波帯では帯域幅の利用限度が限られ高速多量のデータ伝送ができないこと、および周波数が高いほど、アンテナの効率が向上するためである。超短波は、日本においては地上波テレビジョン放送のアナログ放送にも使用されてきたが、2011年(平成23)7月(東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県は2012年3月末)にデジタル放送となったことに伴い、周波数も極超短波に移行した。
[石島 巖]
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…超短波といわれる周波数帯(30~300MHz)を用い,周波数変調frequency modulation(FM)方式で変調された音声放送。一般的に雑音に強く良音質がえられ,ステレオ放送ができるところから,音楽番組が多く放送される。…
…周波数30~300MHzの電波の呼称。超短波ともいう。短波に比べて電波は光と同様に直進する性質を呈するようになるが,建物や小高い丘でも多少の回り込みもあり,テレビ放送,FM放送などに利用されるほか,移動通信,テレメーターなどにも用いられている。…
…VHF omni‐directional rangeの略で,超短波全方位無線標識ともいう。飛行中の航空機に方位を知らせるための地上無線標識の一つで,超短波を使い,磁北を示す電波と,磁北から時計まわりに回る指向性電波を発射する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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