知恵蔵 「VTuber」の解説
VTuber
VTuberを操るのは生身の人間である。自身の表情や動作をバーチャルリアリティー(VR、仮想現実)機器やカメラで検知し、人間の動きをデジタルデータ化してコンピューターに取り込む技術「モーションキャプチャー」などを利用して3Dデータに変換して、アバターに演じさせる。投稿する動画の内容は、雑談やクイズ、ゲーム実況、独自の企画など多岐にわたる。ユーチューバーと同様に、投稿した動画の再生回数に応じた広告収入などが主な収益となっている。
2016年12月から活動を始めた、可愛らしい女性の姿をしたAI(人工知能)であると称する「キズナアイ」が、「バーチャルYouTuber」と自称したことから、この呼び方が世の中に浸透していった。また、アニメやゲームのキャラクターとは異なり、生放送で視聴者との会話が可能なことなどから人気が高まっていった。
その後、VRの普及で、アバターを作って動画を配信するための機材の価格が下がり、ソフトウエアも入手しやすくなったことから、VTuberを世に送り出す人が急増、18年8月現在、数千人が活動している。草分け的存在のキズナアイは、テレビ番組への出演や写真集の発売など活躍の場を広げ、18年3月には、日本政府観光局の訪日促進アンバサダーに就任した。キズナアイのチャンネル登録者数は18年8月現在、200万を超えている。このほか、人気のVTuberには、「輝夜月(カグヤルナ)」、「ミライアカリ」、「電脳少女シロ」などがいる。動画の閲覧回数上位のVTuberのアバターは、多くが女性だが、男性やお年寄りのアバターを用いる人もいる。
世間の認知度が上がるにつれて、VTuberを活用したビジネスも活発化している。ソーシャルゲーム大手のグリーは18年4月、VTuberを発掘・育成し、動画コンテンツなどを制作する100%出資の新会社を設立。100億円規模の事業やコンテンツ投資をしていくなどと発表したほか、18年8月の同社の決算説明会では、自社のVTuberが説明を行った。また、茨城県も同年8月初め、県のネット動画サイトに県公認のVTuberを起用した。
(南 文枝 ライター/2018年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報