知恵蔵 「WikiLeaks」の解説
WikiLeaks
現在、運営委員会は氏名や顔写真が公表されており、実名で活動しているが、それ以外に1200人以上の正式に登録されたボランティアが組織を支えており、1200万以上もの文書が情報源から届けられている。
WikiLeaksには、政府や企業、宗教などの内部情報が匿名で公開できるように様々な配慮が行われている。投稿者個人の身元が露呈しないような匿名システムを軸に、偽造文書やスパム、ポルノなどの不要情報が混在しないように工夫されている。文書には報道者による分析がコメントとして付加される。多数の専門家による分析で信頼性が検証されるため、偽情報やプロパガンダは見破られる可能性が高いとされている。
一方、流出元とされる団体からは、情報流出は無責任であり非合法な行為であると非難も出ている。最近の例では、アフガニスタン戦争に関する政府内部資料の流出事件が、政治問題にまで発展し、アメリカ連邦捜査局(FBI)が情報源の捜査に乗り出すまでに至った。また、ジャーナリズムの反応は様々で、機密文書を公開する英雄ととらえるものもあれば、意図的な情報操作と危惧(きぐ)する声もある。
膨大な文書が簡単に検索できるWikiLeaksは、情報を操作したい政府や機関にとって脅威の存在であるだけでなく、世論を左右する第三者機関としての役割を果たすことを目的としている。WikiLeaksの情報量が拡大しつづけ、重要性が高まるにつれ、流出元との摩擦はより深刻なものとなろう。デマの発信元となるか、メディア必須の暴露サイトとなるか、WikiLeaksの動向は各方面の注目の的となっている。
(佐橋慶信 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報