ヤギの乳。羊乳とともに古代から利用されていて、考古学的にはカスピ海沿岸のベルト洞窟(どうくつ)から紀元前6000年ころのヤギの骨が発掘されている。ヤギはウシに比べ小食粗食で、かつ山岳地帯でも飼育できるので「貧農の乳牛」といわれ、トルコ、ギリシア、イタリア、フランスの山岳部、イベリア半島などで多く飼育されている。搾乳量の多いヤギはザーネン種、トッゲンブルグ種などで、ザーネン種では日量平均3キログラムの搾乳が可能である。2005年における世界産出量は山羊乳1243万5000トン、羊乳857万トンで、同年の牛乳産出量に比べてそれぞれ2.3%、1.6%であった。山羊乳、羊乳ともに牛乳に比べ脂肪率が高く、直接飲用に供されるほかチーズに加工される。フランス産山羊乳チーズはシェーブルchèvresと総称され、ピラミッド形や円盤形など変化に富んだ形につくられる。羊乳チーズの典型的なものは、ギリシアから中近東一帯で広くつくられている、ギリシアのフェタfetaに代表される柔らかい純白で塩辛いチーズが多い。
[新沼杏二]
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