曹汝霖(読み)そうじょりん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「曹汝霖」の意味・わかりやすい解説

曹汝霖
そうじょりん / ツァオルーリン
(1875―1966)

中国の親日派官僚。上海(シャンハイ)の人。早稲田(わせだ)大学などに留学。帰国後清(しん)朝に出仕し、1911年春、外務部副大臣となる。辛亥(しんがい)革命後は袁世凱(えんせいがい)の下で参議院議員、外務部次長となり、1915年(大正4)日本の対華二十一か条要求を承認。1916年交通兼外交総長(大臣)となり、袁の死後段祺瑞(だんきずい)内閣に重きをなし、西原借款を取りまとめた。1919年五・四運動の際、売国奴として学生の焼き討ちにあい、免職。のち実業界で活躍。日中戦争中は日本の傀儡(かいらい)政権に参加し、戦後漢奸(かんかん)に指名されたが、釈放後アメリカ亡命した。

[阿川修三]

『曹汝霖回想録刊行会編・訳『一生之回憶』(1967・鹿島研究所出版会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「曹汝霖」の意味・わかりやすい解説

曹汝霖 (そうじょりん)
Cáo Rǔ lín
生没年:1877-1966

現代中国の政治家財政家。字は潤田。上海生れで,留日学生出身。倒壊寸前の清朝末期の内閣に名を連ねたのを振出しに,日本の華北傀儡(かいらい)政権に関与するまで,つねに反動的支配者の側につき続けたため,現代中国史上の敵役として知られる。ことに,袁世凱時代に日本との二十一ヵ条交渉に従事したことと,段祺瑞(だんきずい)時代に西原借款の受入れに奔走したことは,1919年の五・四運動に際し,陸宗輿(りくそうよ),章宗祥(しようそうしよう)とともに親日派売国官僚として民衆から徹底批判される原因となった。
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百科事典マイペディア 「曹汝霖」の意味・わかりやすい解説

曹汝霖【そうじょりん】

現代中国の政治家。字(あざな)は潤田。上海生れ。対華二十一ヵ条要求(1915年)での日本との交渉,西原借款(1916年−1918年)の受入れ,日本の華北傀儡(かいらい)政権への関与など,その政治活動はつねに反動的支配者の側に立ったもので,1919年の愛国運動〈五・四運動〉では親日派売国官僚として徹底的に批判された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曹汝霖」の意味・わかりやすい解説

曹汝霖
そうじょりん
Cao Ru-lin; Ts`ao Ju-lin

[生]光緒2(1877).12.10. 中国,上海
[没]1966.8.4. アメリカ合衆国,ミシガン,デトロイト
中国,民国初期の政治家。早稲田大学卒業。 1916年段祺瑞内閣以来,各内閣で交通,外交,財政各部長を務めた。 1919年五・四運動のデモで,親日売国奴として自邸を焼き打ちされた。その後下野して,交通銀行総理,中国実業銀行総経理などを歴任。日中戦争後,華北臨時政府主席になるよう懇請されたが辞退。第2次世界大戦後はホンコン,東京に移り,晩年はアメリカ合衆国のミシガン州で余生を送った。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「曹汝霖」の解説

曹汝霖(そうじょりん)
Cao Rulin

1877~1966

民国時代初期の親日官僚。上海の人。段祺瑞(だんきずい)内閣の閣僚で西原借款に尽力したが,五・四運動で失脚,実業界に入る。日中戦争で対日再協力。漢奸(かんかん)に指名され,日本,アメリカに亡命。自伝『一生之回憶』(1966年)がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「曹汝霖」の解説

曹汝霖 そう-じょりん

1877*-1966 中国の政治家。
光緒(こうしょ)2年12月10日生まれ。日本の早大卒業。袁世凱(えん-せいがい)政府,段祺瑞(だん-きずい)政府の要職を歴任し,日本の二十一ヵ条要求の承認,西原借款の成立に努力。1919年の五・四運動の際,親日派売国官僚として攻撃され罷免された。1966年8月4日アメリカで死去。90歳。上海出身。

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世界大百科事典(旧版)内の曹汝霖の言及

【五・四運動】より

…しかしその願望はうらぎられ,ドイツの山東権益はイギリス,フランス,アメリカ等大国の利害から日本に引き渡されることになった。人々はこの事態を亡国の危機ととらえ,5月4日,北京の学生がまっさきに決起し,デモのあと,親日派高官曹汝霖邸を焼き打ちした。運動は各都市,各階層にひろがり,授業拒否の学生,救国十人団に結集した市民が商品ボイコットを始め,反日運動を展開した。…

※「曹汝霖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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