第1次大戦中に日本が中国に要求した政治的・経済的諸利権の要求。対華二十一ヵ条要求ともいう。1914年第1次大戦の勃発によりヨーロッパ勢力が中国から後退したすきをねらって第2次大隈重信内閣は中国本部での利権獲得の準備に着手した。加藤高明外相は政府,軍部,財界などの諸要求をとりまとめ,5号21ヵ条の要求を作成した。その内容は,第1号で中国山東省の旧ドイツ利権の継承に鉄道新線要求など4ヵ条,第2号は旅順・大連の租借期限,満鉄安奉線の租借期限の99ヵ年延長と満蒙における日本人商租権など7ヵ条,第3号は漢冶萍煤鉄公司(かんやひようばいてつコンス)の日中合弁要求,第4号は中国沿岸港湾および島嶼の不割譲(以上を絶対必要条項とした)。第5号は中国政府の政治・財政・軍事顧問に日本人を招くこと,日中兵器の統一等7ヵ条で,中国主権侵害の政治的要求であり,これを希望条件であるとした。15年1月加藤外相は,日置(へぎ)益駐華公使を通じて袁世凱大総統に直接この要求書を手渡し,秘密保持と一括交渉を要求した。イギリスやアメリカの干渉に期待した袁は内容をアメリカ駐華公使にもらし,また中国の新聞にも報道された。しかしヨーロッパ戦況の重大化でイギリス,フランス,ロシア諸国は干渉の余裕がなく,アメリカだけは日本政府に抗議したが,きわめて妥協的なものにすぎなかった。中国民衆はこの日本の屈辱的要求にたいして日貨排斥,救国儲金などの形で抗議運動を展開し,民族運動は急速に高まった。しかし,日本は青島(チンタオ)占領の日本軍を増派し,その圧力で袁政府に要求の受諾をせまり,第5号要求を保留したまま,5月9日には袁政府にこれをのませ,同月25日には諸条約・交換公文に調印した。中国民衆は5月9日を国恥記念日としてはげしい抗議運動を展開,アメリカも,中国の条約上の諸権利と門戸開放主義に反する場合はこれを認めないとの〈不承認主義〉を通告してきた。21ヵ条要求の結果は,中国の民族運動(五・四運動)およびアメリカの利害との対立をいっそう深めたばかりか,1921,22年のワシントン会議により,21ヵ条要求のうち満蒙利権をのぞくほとんどの要求は無効におわった。
執筆者:由井 正臣
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…第1次大戦中,アメリカと日本の間に結ばれた中国に関する共同宣言。二十一ヵ条要求など第1次大戦中の日本の中国侵略に不安をもったアメリカは,1917年の対独参戦を機に日本からの特使派遣を要請し,日本は前外相石井菊次郎を特使として派遣した。同年9月,石井は国務長官R.ランシングと交渉を開始,日本の中国における特殊地位を強調した。…
… 三国干渉で譲歩を余儀なくされた日本は,第1次大戦に連合国側として参加し,1914年膠州湾のドイツ軍を破り,ドイツの保有していた利権を受け継ごうとした。このとき日本の提出した〈二十一ヵ条要求〉に対しては,中国国民は国際世論を背景に反対運動をおこし,条約の廃棄と山東の返還を求め,ついに1922年のワシントン条約で,山東の利権は放棄させられた。これを〈二十一ヵ条問題〉あるいはその第1項が山東についてであったため〈山東問題〉という。…
…袁世凱は,民国5年(1916)を洪憲元年と改元し,実質的には皇帝としてふるまったが,正式即位には至らなかった。袁世凱の野心にきっかけを与えたのは,日本の二十一ヵ条要求であった。1915年春,国家の存亡にかかわる広範な要求をつきつけられて,中国民衆の愛国心は大きく燃え上がり,日本商品ボイコット,国産品愛用,救国のための拠金を訴える運動が各地で展開された。…
…満州事変によって日本軍が占領した満州(中国東北部)と内蒙古・熱河省を領域として樹立された日本の傀儡(かいらい)国家。日露戦争によって関東州租借地と南満州を勢力範囲とした日本帝国主義は日英同盟,日露協商を利用して満州の〈特殊地位〉を固めながら大陸侵略をすすめ,1915年には二十一ヵ条要求を中国に押しつけて南満州と東部内蒙古における権益の拡大強化をはかった。しかしワシントン会議ののち日本の満蒙支配は中国分割をめぐって列強との対立を深め,中国民族運動の強い抵抗をうけるにいたった。…
※「二十一箇条要求」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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