東下り(読み)アズマクダリ

デジタル大辞泉 「東下り」の意味・読み・例文・類語

あずま‐くだり〔あづま‐〕【東下り】

京都から東国へ行くこと。中世近世には、もっぱら鎌倉江戸へ行くことをさす。海道下り。

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百科事典マイペディア 「東下り」の意味・わかりやすい解説

東下り【あずまくだり】

伊勢物語》9段から13段までの主人公在原業平)の武蔵国への旅と14・15段,場合によって115・116段の陸奥での話を含む諸段をいう。八橋でのかきつばたの和歌,宇津峠での修行者との出会いなど,後の文学作品や芸術意匠に大きな影響を与えた。業平の東国旅行は史書に見えず,その真偽は今日でも説が分かれる。鎌倉期の冷泉家注釈ではすべて東山などへの隠棲を虚構化したものと説く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東下り」の意味・わかりやすい解説

東下り
あずまくだり

京都から東国方面へ下向(げこう)すること。海道下りともいう。「東国」の具体的範囲は時代によって異なり、広くは近江(おうみ)国の逢坂(おうさか)山より東の国々から、陸奥(みちのく)までをさす場合もあり、明確に規定しがたいが、その中心は現在の関東地方である。ただし、鎌倉時代以降は「東(あずま)」の意味に変化が生じ、幕府所在地をいうようになり、京都から鎌倉、江戸への下向を、もっぱら東下りといった。

[佐藤裕子]

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世界大百科事典(旧版)内の東下りの言及

【在原業平】より

…業平の家にいた女に藤原敏行が通ってきたことなどである。《古今集》の編者が長文の詞書を何によって記したかについては諸説があるが,近年の研究では,東下りや高貴な女性との密通事件も事実ではないとされ,業平の事跡の物語化は,《古今集》にも顕著に見られると考えられるようになった。他方,《古今集》と同じころ,900年前後に成立したとみられる《伊勢物語》には業平の歌を核にした数々の物語が収められているが,《古今集》と《伊勢物語》によって,業平は漂泊の旅にも出た無用者的な〈すき者〉,失意の皇子と慰め合う名門出の貴公子として描き出されることになった。…

※「東下り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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