日本大百科全書(ニッポニカ) 「篠田桃紅」の意味・わかりやすい解説
篠田桃紅
しのだとうこう
(1913―2021)
書家。本名満洲子(ますこ)。父の勤務地満州(中国東北部)大連(だいれん/ターリエン)で生まれ、2歳のとき帰国。6歳から書の素養のあった父について手ほどきを受け、長じては独学で中国の法帖(ほうじょう)、日本の古筆などを習得した。東京府立第八高等女学校卒業。1940年(昭和15)東京・銀座の鳩居(きゅうきょ)堂で初の個展を開く。第二次世界大戦後は東京、ニューヨーク、ブリュッセル、パリ、シカゴ、ワシントンなど世界各地で個展を開き、墨象作家としての地歩を固めた。従来の書の枠にとらわれず、文字を自在な造形表現の素材としてとらえることから出発し、墨と色、線と面の対比の妙にみる幽玄美と叙情性によって独自の造形世界を展開。国立京都国際会館や東京・増上寺、駐仏日本大使館などの壁面大作が知られている。1992年(平成4)岐阜美術館で回顧展が行われたのちも、個展を開催するなど活躍した。
[尾下多美子・安達直哉]
『『朱泥抄』(1979・PHP研究所)』▽『『いろは四十八文字』(1983・教育書籍)』▽『『日本の名随筆27 墨』(1985・作品社)』▽『『きのうのゆくえ』(1990・講談社)』▽『『桃紅――私というひとり』(2000・世界文化社)』▽『『桃紅えほん』全2冊(2002・世界文化社)』▽『『墨いろ』(PHP文庫)』▽『『その日の墨』(新潮文庫)』▽『『墨を読む 一字ひとこと』(小学館文庫)』