ジョーンズ法(読み)ジョーンズほう

改訂新版 世界大百科事典 「ジョーンズ法」の意味・わかりやすい解説

ジョーンズ法 (ジョーンズほう)

1916年8月29日にアメリカ議会を通過したフィリピン自治法。一般には提案者ジョーンズWilliam A.Jones議員の名前をとってジョーンズ法で知られている。この前文のなかでアメリカは初めて公式に将来フィリピン独立を約束した。最も重要な点は,立法権フィリピン人に与えられたことであり,この結果,フィリピン人から成る上院下院が設置された。だが,行政権はいぜんとしてアメリカ人総督が保持し,総督はフィリピン議会を通過した法律に対し拒否権を保持した。またフィリピン議会による立法権限も,外交鉱山,鋳貨,外国貿易移民については除外されており,司法権も基本的にアメリカの支配下にあった。このように多くの制限付きではあったが,当時のフィリピンでは,アメリカ主権の下での一定の自治権の拡大として評価された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョーンズ法」の意味・わかりやすい解説

ジョーンズ法
じょーんずほう

アメリカ・スペイン戦争で獲得した植民地の地位に関する法律。アメリカ合衆国大統領ウィルソンの下で制定されたもので、二つある。一つは1916年の法であり、前文で「フィリピン群島で安定した政府が樹立されしだい、同群島に対する主権を撤回し、その独立を承認することは、合衆国国民の目的である」と述べ、本文で市民権の賦与、選挙権の拡充、議会の開設などを規定し、将来の独立に向かって一歩を進めた。他の一つは17年の法で、プエルト・リコ基本法であり、同島市民に合衆国市民権を与え、権利章典、労働者保護、選挙による議会などを規定したが、総督、検事総長、教育委員などの要職は合衆国大統領が任命するとあり、旧準州に近い地位であった。

[高橋 章]

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旺文社世界史事典 三訂版 「ジョーンズ法」の解説

ジョーンズ法
ジョーンズほう
Jones Act

1916年,アメリカ合衆国が,フィリピンに将来の独立と自治権を認めた法。フィリピン自治法ともいう
この法により,フィリピンには選挙制による上下両院が設けられ,内政上の多くの権限がフィリピン人に委譲されることになった。ジョーンズ法の名は,この法案を提出した民主党下院議員ジョーンズの名にちなむ。

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