トラバーチン(英語表記)travertine

翻訳|travertine

デジタル大辞泉 「トラバーチン」の意味・読み・例文・類語

トラバーチン(travertine)

大理石一種緻密ちみつ縞状構造をもつ。湧泉ゆうせん地下水炭酸カルシウムが沈殿してできる。建築家具用材となる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「トラバーチン」の意味・読み・例文・類語

トラバーチン

〘名〙 (travertine) 大理石の一種。緻密(ちみつ)な縞状構造をもつ。湧泉(ゆうせん)や地下水の炭酸カルシウムが沈殿してできる。建築や家具用材となる。〔住宅健康法(1958)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「トラバーチン」の意味・わかりやすい解説

トラバーチン
travertine

平行な縞状の細孔を持つ無機質石灰岩。温水,湧泉中に溶けていた石灰分が沈殿して形成されたものであり,平行な縞は堆積の跡を示している。細孔はあるものの,湯の華などとは比較にならぬほど緻密で,広義大理石の一種として扱われ,古来,建築用,装飾用に広く使用されてきた。

 石材として利用されるトラバーチンではトラベルティーノ・ロマーノという石材名で知られるローマ東郊20kmのティボリ産のものが飛び抜けて有名である。もともとトラバーチンという語は,ラテン語のティブルティヌムtiburtinum(〈ティブル(ティボリの古名)の〉という形容詞)に由来している。ほぼ一様なクリーム色のものや,クリーム地に茶色の濃淡の縞の入るものが多く,一地区で産する建築用石材の量としては世界最大である。ローマの建築は,古くはコロセウムから今世紀のエウルのビル群に至るまで,この石ばかりといって過言ではない。また今日では,広く全世界に輸出され,原石が大型で色や模様がそろいやすいことから,ビルの内装工事で特に大規模なものに好んで使用されている。これに次ぐ生産地としては,ティボリに似た石を産するイタリアトスカナ州,赤や白の石を産するイラン黄褐色の石を産するユーゴスラビア,それにペルーアルゼンチンアメリカ合衆国などが数えられる。アメリカ合衆国イェローストーン国立公園のマンモス・ホット・スプリングズでは,温泉地帯に白い階段状の丘があり,そこでは今も湧出する温泉から石灰分が沈殿し,トラバーチンが形成されていく過程が眼前に観察できる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のトラバーチンの言及

【鍾乳洞】より

… 鍾乳洞の特色は洞内にさまざまな石灰華の二次生成物が見られることである。石灰華travertineは地下水に溶存している炭酸カルシウムCaCO3が水温の変化や水の蒸発などのため炭酸ガスCO2の空中への放出によって過飽和となり,沈殿して方解石の結晶となったもので,それが諸種の洞穴生成物をつくる(図)。洞の天井からつらら状に垂れ下がる鍾乳管や鍾乳石,その直下の洞床に筍状に生長する石筍(せきじゆん)stalagmite,この両者が連結した石灰華柱(石柱ともいう),内傾した洞壁から幕状に垂れ下がる石灰幕limestone curtain,外傾した洞壁に滝状にかかる流華石の一種である石灰華滝,傾斜地を流れ下る水流によってつくられた畦石プールが何段にも鱗状に並んだ石灰華段丘travertine terraceなど変化に富んでいる。…

【大理石】より

…生物の遺骸である化石が発見されることも珍しくはない。縞状の石のなかでもっとも多く使われているのは,トラバーチンという平行な縞状の細孔をもつ石灰岩である。クリーム色のもの,それに褐色の縞の入ったもの,褐色,赤などさまざまな種類があるが,ローマ東郊のティボリ産のクリーム色のトラバーチンは,一石種としての産額はカラーラの白大理石よりもさらに多く,世界いたるところのビルに使用されている。…

※「トラバーチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」