微粒化(読み)びりゅうか(英語表記)atomization

改訂新版 世界大百科事典 「微粒化」の意味・わかりやすい解説

微粒化 (びりゅうか)
atomization

液体気体中に液滴として分散させる操作。天然に存在する液滴と同じく大粒の雨(数mmくらい)から霧やフューム(数μmくらい)まで広範囲の粒径が用いられる。

微粒化の方法は次の五つがある。(1)気体と液体との相対速度を利用して液膜や液のひもをつくり,細かく分裂させる。(2)液柱や液膜に自励振動を起こさせ成長した表面波により比較的大きな液滴に分裂させる。(3)高速の液どうしの衝突,高速の液の固体壁への衝突で分裂させる。(4)音波や超音波を液柱,液膜に加えて分裂させる。(5)直流や交流の静電気を印加し,見かけの表面張力を低下させ微細な液滴に分裂させる。

微粒化を行うための機器で,一般にはアトマイザーatomizerとも呼ばれる。これには上述の操作方法を単独でか,あるいは組み合わせて,それぞれの用途に適するようにくふうされた機器が実用化されている。上記(1)と(2)は組合せが多い。例をあげれば,(1)の応用としては次のものがある。(a)圧力噴射弁 ディーゼル機関や一部のガソリン機関および一部のバーナー,缶入りスプレーなど。(b)二流体アトマイザー これは内部混合と外部混合に大別される。小規模から大規模まで実用化されており,空気または水蒸気を用いる。重油バーナー,自動車のキャブレター,霧吹き,スノーマシン,冷却粉塵(ふんじん)除去装置,ガス吸収装置など。(1)と(2)の組合せ応用としては,回転円板アトマイザー,円筒アトマイザー,円錐アトマイザーがある。これらは毎分数百から数万回転の広い範囲で回転する面上へ液体を供給し,その遠心力による液速度と面上においての波動とを組み合わせたもので,低速では均一度の高い粗粒子が,高速では微細粒子が得られ,高濃度や高粘度の液体あるいはスラリーなどの微粒化に用いられる。用途はバーナー,噴霧乾燥,静電塗装など。また,ホロコーンノズル,ファンノズルなども用いられている。(2)のみの応用は比較的少ない。しかし,適当な振動を直接あるいは音波などで液柱に加えると均一な滴塊がつくりだされ,均一度の高いゼオライト粒子やカプセルの製造,農薬散布,医薬品の製造などに利用されている。(3)の応用では各種の衝突弁がある。(4)の応用では超音波加湿器などが実用化されており,非常に微細な液滴が小型の装置で得られる利点がある。狭義にはこれらの装置を指してアトマイザーと呼ぶ。(5)の方法は静電塗装に応用されているが,十分な実用化の段階には至っていない。

均一滴アトマイザー以外の噴霧装置でつくられた液滴の径は粒径が分布している。この分布を数式で表すために粒度分布関数がある。通常用いられているものには,対数正規分布式やロジン=ラムラー式あるいは抜山=棚沢式と呼ばれるΓ分布関数がある。これらの式は重量や表面積分布にも用いられる。一方,粒度(液滴径が粗いか細かいか)を表すために平均粒径が用いられる。平均粒径には,重量50%に相当するメジアン径や算術平均径,表面積平均径,体積面積平均径(ザウテル平均径とも呼ばれる)などが一般に使用されている。

固体(粉体)や液体の微粒子の粒子径とその個数を計測し,粒度分布や平均粒径を測定する装置。液体噴霧に対しては,直接受止液法や噴霧急速冷凍法などが基本的な方法となるが,計測に手数が必要である。飛んでいる液滴から直接写真法やホログラフィー写真法で撮影し計測する方法もある。これらの写真から粒度分布や平均粒径を測定し,計算する装置が実用化されている。これらに対し,レーザー光線を液滴群に当てて,その散乱光を捕捉,演算することにより,粒度分布,平均粒径,粒子空間分布および粒子速度分布を演算し表示するレーザー粒子解析器が実用段階に入ってきた。固体(粉体)粒子の測定についてはふるい(篩)による分級法が基本となる(標準ふるい)。また,噴霧に対し用いられる測定方法もだいたい適用できるが,ほかに粒子沈降法や透過度による方法がある。微小粒子(5μm前後)に対してはカスケードインパクターによる方法などがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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