真葛・実葛(読み)さねかずら

精選版 日本国語大辞典 「真葛・実葛」の意味・読み・例文・類語

さね‐かずら ‥かづら【真葛・実葛】

[1] 〘名〙
モクレン科のつる性常緑木。関東以西の本州、四国、九州の山地に生える。枝は褐色で皮に粘液を含む。葉は互生し柄をもち革質で厚く、長さ五~一〇センチメートルの楕円形の両端がとがり、縁にまばらな鋸歯(きょし)があって裏面は紫色を帯びる。雌雄異株。夏、葉腋(ようえき)に淡黄白色で径約一・五センチメートルの広鐘状花を下向きに単生する。花被片は九~一五枚、雌雄蕊は多数。果実は径約五ミリメートルの球形の液果で、ふくらんだ花托(かたく)のまわりに球状に多数つき赤熟する。果実を干したものを南五味子と呼び北五味子(チョウセンゴミシ)の代用として健胃・強壮薬にする。古来枝の皮に含まれる粘液物を髪油や製紙用の糊料に用いた。漢名に南五味子を用いるが別物という。びなんかずら。さなかずら。とろろかずら。《季・秋》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
謡曲・昭君(1435頃)「元結(もとゆ)ひさらに、たまらねば、さね葛(かずら)にて、結(むす)び下げ」
② ①の茎からとった頭髪油。
※浮世草子・好色一代男(1682)三「髪はさねかづらの雫(しづく)にすきなし」
③ ①の種子からとった薬。
延喜式(927)三七「草薬五十九種〈略〉五味子。兎糸子」
[2] はい回った蔓が末で逢うということから「逢う」「のちも逢う」にかかる。また、蔓をたぐるということから、「繰(く)る」と同音の「来る」にかかる。さなかずら。
万葉(8C後)二・二〇七「狭根葛(さねかづら) 後もあはむと 大船(おほぶね)の 思ひたのみて」
※後撰(951‐953頃)恋三「つれなきを思ひしのぶのさねかつらはては来るをも厭なりけり〈よみ人しらず〉」
[語誌]((二)について) (1)「万葉集」には二例あり、いずれも「後も逢ふ」にかかっている。同意の「さなかづら」も「万葉集」では、「後も逢ふ」「いや遠長く」「絶えず」にかかり、「さ寝」を導く序ともなっているが、中古以降は用いられなくなる。
(2)中古以降の用法としては、挙例の「後撰集」や「あふ事は絶にし物をさねかつらまたいかにして苦しかるらん」〔木工権頭為忠百首‐恋〕のように、「来る」「苦し」「絶ゆ」などを掛詞や縁語として多用し、「さね」に「さ寝」をかけたりして用いられた。

さな‐かずら ‥かづら【真葛・実葛】

[1] 〘名〙
古事記(712)中「佐那葛(サナかづら)の根を舂(つ)き、其の汁の滑(なめ)を取りて」
② 植物「かみえび」の異名。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
[2]
① (一)①のつるが伸びて、一時はわかれても、またからみ合うところから「のちに逢う」にかかる。さねかずら。
※万葉(8C後)一三・三二八〇「今さらに 君来まさめや 左奈葛(サナかづら) 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて」
② (一)①のつるがどこまでも長く伸びるところから、「遠長し」「絶えず」などにかかる。
※万葉(8C後)一二・三〇七三(或本歌)「木綿裹(ゆふつつみ)白月山の佐奈葛(サナかづら)絶えむと妹を吾が思はなくに」
[補注]次の例は「さなかずら」と類音を持つ「さ寝(ね)」にかかる序詞の一部として用いられている。「玉くしげみもろの山の狭名葛(さなかづら)さ寝ずはつひにありかつましじ」〔万葉‐九四〕。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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