真葛(読み)サネカズラ

デジタル大辞泉 「真葛」の意味・読み・例文・類語

さね‐かずら〔‐かづら〕【葛/葛】

[名]マツブサ科蔓性つるせいの常緑低木。暖地山野自生。葉は楕円形で先がとがり、つやがある。雌雄異株で、夏、黄白色の花をつけ、実は熟すと赤くなる。樹液で髪を整えたので、美男葛びなんかずらともいう。さなかずら 秋》
[枕]さなかずら」に同じ。
「―のちも逢はむと」〈・二〇七〉

さな‐かずら〔‐かづら〕【葛/葛】

[名]サネカズラのこと。
「―の根をき、其の汁のなめを取りて」〈・中〉
[枕]葛はつるが分かれたのち先でまたあうところから、「のちもあふ」にかかる。
「―後も逢はむと」〈・三二八〇〉

ま‐くず【真葛】

美称
「―ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも」〈・一九八五〉

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精選版 日本国語大辞典 「真葛」の意味・読み・例文・類語

さね‐かずら‥かづら【真葛・実葛】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. モクレン科のつる性常緑木。関東以西の本州、四国、九州の山地に生える。枝は褐色で皮に粘液を含む。葉は互生し柄をもち革質で厚く、長さ五~一〇センチメートルの楕円形の両端がとがり、縁にまばらな鋸歯(きょし)があって裏面は紫色を帯びる。雌雄異株。夏、葉腋(ようえき)に淡黄白色で径約一・五センチメートルの広鐘状花を下向きに単生する。花被片は九~一五枚、雌雄蕊は多数。果実は径約五ミリメートルの球形の液果で、ふくらんだ花托(かたく)のまわりに球状に多数つき赤熟する。果実を干したものを南五味子と呼び北五味子(チョウセンゴミシ)の代用として健胃・強壮薬にする。古来枝の皮に含まれる粘液物を髪油や製紙用の糊料に用いた。漢名に南五味子を用いるが別物という。びなんかずら。さなかずら。とろろかずら。《 季語・秋 》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
      1. [初出の実例]「元結(もとゆ)ひさらに、たまらねば、さね葛(かずら)にて、結(むす)び下げ」(出典謡曲・昭君(1435頃))
    2. の茎からとった頭髪油。
      1. [初出の実例]「髪はさねかづらの雫(しづく)にすきなし」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)三)
    3. の種子からとった薬。
      1. [初出の実例]「草薬五十九種〈略〉五味子。兎糸子」(出典:延喜式(927)三七)
  2. [ 2 ] はい回った蔓が末で逢うということから「逢う」「のちも逢う」にかかる。また、蔓をたぐるということから、「繰(く)る」と同音の「来る」にかかる。さなかずら。
    1. [初出の実例]「狭根葛(さねかづら) 後もあはむと 大船(おほぶね)の 思ひたのみて」(出典:万葉集(8C後)二・二〇七)
    2. 「つれなきを思ひしのぶのさねかつらはては来るをも厭なりけり〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋三)

真葛の語誌

( [ 二 ]について ) ( 1 )万葉集」には二例あり、いずれも「後も逢ふ」にかかっている。同意の「さなかづら」も「万葉集」では、「後も逢ふ」「いや遠長く」「絶えず」にかかり、「さ寝」を導く序ともなっているが、中古以降は用いられなくなる。
( 2 )中古以降の用法としては、挙例の「後撰集」や「あふ事は絶にし物をさねかつらまたいかにして苦しかるらん」〔木工権頭為忠百首‐恋〕のように、「来る」「苦し」「絶ゆ」などを掛詞や縁語として多用し、「さね」に「さ寝」をかけたりして用いられた。


さな‐かずら‥かづら【真葛・実葛】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. さねかずら(真葛)
      1. [初出の実例]「佐那葛(サナかづら)の根を舂(つ)き、其の汁の滑(なめ)を取りて」(出典:古事記(712)中)
    2. 植物かみえび」の異名。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ]のつるが伸びて、一時はわかれても、またからみ合うところから「のちに逢う」にかかる。さねかずら。
      1. [初出の実例]「今さらに 君来まさめや 左奈葛(サナかづら) 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて」(出典:万葉集(8C後)一三・三二八〇)
    2. [ 一 ]のつるがどこまでも長く伸びるところから、「遠長し」「絶えず」などにかかる。
      1. [初出の実例]「木綿裹(ゆふつつみ)白月山の佐奈葛(サナかづら)絶えむと妹を吾が思はなくに」(出典:万葉集(8C後)一二・三〇七三(或本歌))

真葛の補助注記

次の例は「さなかずら」と類音を持つ「さ寝(ね)」にかかる序詞の一部として用いられている。「玉くしげみもろの山の狭名葛(さなかづら)さ寝ずはつひにありかつましじ」〔万葉‐九四〕。


ま‐くず【真葛】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ま」は接頭語 ) 葛の美称。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「真葛(まくず)這ふ 春日の山は」(出典:万葉集(8C後)六・九四八)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「真葛」の解説

真葛 (サネカズラ・サナカズラ)

学名:Kadsura japonica
植物。マツブサ科の常緑つる性植物,園芸植物,薬用植物

真葛 (マクズ)

植物。マメ科の落葉つる性植物,園芸植物,薬用植物。クズの別称

真葛 (サナカズラ)

植物。サネカズラ・カミエビの別称

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