顕熱(読み)けんねつ

精選版 日本国語大辞典 「顕熱」の意味・読み・例文・類語

けん‐ねつ【顕熱】

〘名〙
物質状態は変えずに、温度変化にのみ費やされる熱量。⇔潜熱(せんねつ)。〔工学字彙(1886)〕
② 高揚した気分が、外に現われること。
帰省(1890)〈宮崎湖処子〉五「今は我為めに故郷の快楽の顕熱の日なりき」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「顕熱」の意味・わかりやすい解説

顕熱
けんねつ

熱力学におけるエンタルピーと同義である。気象学では潜熱に対比して用いられる。いま、気温をT(絶対温度)、空気定圧比熱Cpとすれば、単位質量の空気の顕熱hは次式で与えられる。

  h=CpT
顕熱は熱力学的変化において、圧力一定にした場合に必要な熱量を考慮した一種エネルギーを示す状態変数である。

[股野宏志]

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化学辞典 第2版 「顕熱」の解説

顕熱
ケンネツ
sensible heat

温度変化として現れる熱量のことであり,物体の温度変化に平均熱容量を乗じて計算される.温度変化として現れない潜熱(蒸発潜熱,融解熱)に対して使われる.

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栄養・生化学辞典 「顕熱」の解説

顕熱

 物質を加熱したときにそれが温度上昇として観察される熱.対語は潜熱で,例えば氷が融けて水になっているときには熱を与えても温度上昇は観察されない.このような場合の熱と区別される.

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世界大百科事典(旧版)内の顕熱の言及

【潜熱】より

…より大きな熱を加えた場合も融解が完全に終わるまでは温度は一定に保たれる。物体に熱を与えたとき,その熱量に比例して温度変化が現れる場合,この熱を潜熱に対して顕熱sensible heatということがある。相転移【鈴木 増雄】。…

※「顕熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」