アゲル・プブリクス(英語表記)ager publicus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アゲル・プブリクス」の意味・わかりやすい解説

アゲル・プブリクス
ager publicus

古代ローマ公有地。ローマは,イタリア半島征服過程で,抵抗した国家領土の一部を没収,その一部はローマ市民に分与 assignatioまたは賃貸したが,残りの部分の所有権は国家に残したまま,一定の税を支払う条件で,希望者にその土地を占有 occupatioさせて耕作することを許した。これがアゲル・プブリクスである。第2次ポエニ戦争によるイタリア半島の荒廃ののち,元老院議員,騎士 (エクイテス ) など富裕な市民は,戦争により大量に獲得された奴隷を労働力として広い公有地を占有し,牧畜,果樹栽培などを行う一方,相次ぐ戦争に従軍し,債務を負った農民を追放して,自己の占有地を拡大していった。この弊害を改革しようとしたグラックス兄弟企図も失敗し,小農民は没落,ローマの国防力低下をきたした。前 111年の農地法で,公有地の占有者にその土地の所有権が認められるようになり,カンパニアなど一部を除いてイタリアにおけるローマの公有地は消失した。ローマは,イタリア外の土地を征服して属州化する過程でも公有地を獲得したが,その大部分は,帝政の始るまでに譲渡されたり,植民都市の建設にあてられた。帝政初期にはかなりの公有地が皇帝領に加えられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「アゲル・プブリクス」の意味・わかりやすい解説

アゲル・プブリクス
ager publicus

古代ローマの公有地。ローマは征服の過程で,頑強に抵抗した都市や国家や部族の土地の一部を取りあげ,ローマ国民の所有地とした。この土地の一部は,植民などによって土地のないローマ市民に分配されたが,残りは〈先占〉にまかされた。これは,実際に公有地を利用できる者が低額地代でこれを借りるというもので,有力な市民の大土地所有形成の一手段となった。公有地の利用は,共和政期のローマの政治抗争の中で常に重要な争点をなしていたが,前111年の土地法によって,イタリア内の先占されていた公有地は一定の制限つきで私有地と認められ,イタリアの公有地は大幅に減少した。属州にも広大な公有地があったが,帝政期に入ると,これらは次第に皇帝領に吸収されていった。
ラティフンディウム
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世界大百科事典(旧版)内のアゲル・プブリクスの言及

【ラティフンディウム】より

…ローマ共和政初期には,市民間の土地所有における格差は,それほど大きなものではなかった。しかし,征服活動によって広大な公有地(アゲル・プブリクス)が生じると,貴族や上層平民はこれを占有することによって,実質的に広大な土地を集積することになった。一方,下層の平民の多くは,兵士として長期にわたって外地での戦争にかり出されたので,農地経営の基盤を失って土地を手放した。…

【ローマ】より

…ローマの完全市民は,自らの土地をもち従軍義務を負うということが,国制上の原理となっていたのである。この私有地と並んで公有地アゲル・プブリクスがあり,実際に経営する者が低い地代でこれを占有した。ローマが征服によって領土を拡大するにつれ,公有地も拡大した。…

※「アゲル・プブリクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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