アシア(読み)アシア[ローマぞくしゅう](その他表記)Roman province of Asia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アシア」の意味・わかりやすい解説

アシア[ローマ属州]
アシア[ローマぞくしゅう]
Roman province of Asia

前 133年ペルガモン王アッタロス3世ローマに領土を遺贈し,これを前 129年の執政官 (コンスル ) M.アキリウスが属州とした地域。最初はミュシアアイオリスリュディアイオニアカリアなどを含んだが,以後 L.スラポンペイウス (大ポンペイウス) らの手で領域が広がり,3世紀には小アジア半島西部とその沿岸諸島を範囲とし,北はビチュニア,東はガラチア,南はリュキア,パンフリアと境を接するにいたる。資源が豊かで農産物を多く産し,また羊毛工業でも知られ,交通の要地でもあり,ローマの支配収奪の対象となる。ミトラダテス戦争でも反ローマ的であったが,スラ,ポンペイウスにより属州統治が確立。帝政期を通じて,次第にその重要性を強めた。かつての自治都市も帝国の行政機構に繰入れられた。しかし3~4世紀にかけて衰退し,コンスタンチノープルの建設とともに大陸奥地との通商の地位は失ったが,東ローマ帝国 (ビザンチン帝国) 時代には,物的・人的資源の供給地として,その重要性は変らず,キリスト教の人口密度も稠密で,教会,司教区も発展し,モンタヌス派も起った。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アシア」の解説

アシア
Asia

元来はアナトリア(小アジア)をさす語であるが,いわゆる植民の時代以後,ヨーロッパと対比されるところのアジアを含意するようになった。語源については古代以来,諸説があって定まらない。ローマの属州名としてはアナトリア西部をさす。

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世界大百科事典(旧版)内のアシアの言及

【アジア】より

…アジアとは地球の陸地の一部分を指す地域の名称でユーラシア大陸の東の部分およびそれに付属する日本列島などの島々を指し,今日では通常,ヨーロッパとはウラル山脈,ウラル川,カスピ海,大カフカス山脈,黒海,ボスポラス海峡,ダーダネルス海峡により区分され,アフリカとの境はスエズ運河とされている。しかし諸民族・諸国家からなる多様なものを含むから,時代によってアジアという語が意味する内容は大きく変化してきた。本項においては,地理的な範囲,自然,民族,国家などには言及せず,もっぱらアジアという言葉の意味の変化を追ってみたい。…

【小アジア】より

…セレウコス朝の衰退に伴ってこの傾向はいっそう顕著となり,前3世紀半ばに起こったペルガモン王国とポントス王国とが中でも最も強大となった。前2世紀半ば以降共和政ローマの力がしだいに小アジアにまで及び,前129年旧ペルガモン領に直轄領たる属州アシアが設けられた。一方の雄ポントス王国はローマに抵抗して戦ったが敗れ,前63年ビテュニア・ポントゥス州が設置された。…

【フリュギア】より

…前275年にはガラティア人(ケルト系)の侵入を受けてサンガリオス川の東部を譲り,ペルガモン王国が西部を占領した。前133年にはこの西部地帯はローマ領に組み込まれ,属州アシアとされた。さらに後300年,コンスタンティヌス帝は帝国統治機構の再編にあたって,この地を独立した2属州フリュギア・プリマとフリュギア・セクンダとに分割した。…

※「アシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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