デジタル大辞泉
「秒」の意味・読み・例文・類語
びょう〔ベウ〕【秒】
1 時間の単位。1秒は1時間の3600分の1、1分の60分の1。国際単位系(SI)の基本単位の一で、かつては平均太陽日の86400分の1と定められていたが、1967年の国際度量衡総会で、基底状態にあるセシウム133原子の特定の放射の91億9263万1770周期の継続時間を1秒と定義し、それ以前に採用されていた暦表時と量的に等しくなるように決められた。記号s セコンド。
2 角度・緯度・経度の単位。1秒は1度の3600分の1、1分の60分の1。記号″ 秒角。
[補説]近年、俗に「秒で」の形で、すぐに、ただちにの意で用いられることがある。「秒で帰る」
[類語]時・分
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びょうベウ【秒】
- 〘 名詞 〙
- ① 時間の単位。一時間の六〇分の一が一分、一分の六〇分の一が一秒。
- [初出の実例]「一昼夜を二十四時とし、一時を六十分とし、一分を六十秒とす」(出典:暦象新書(1798‐1802)中)
- ② 角度、経緯度の単位。一度の六〇分の一を一分、一分の六〇分の一を一秒という。〔夢渓筆談‐象数二〕
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普及版 字通
「秒」の読み・字形・画数・意味
秒
常用漢字 9画
[字音] ビョウ(ベウ)
[字訓] のぎ・かすか・わずか
[説文解字]
[字形] 会意
禾(か)+少。〔説文〕七上に「禾(くわ)の(ばう)なり」とあり、穂先の部分をいう。きわめて細いものであるから、かすか、わずかの意に用いる。時や角度をはかるときの単位として、分の六十分の一をいう。
[訓義]
1. のぎ、穂(ほ)の先。
2. かすか、わずか。
3. 時や角度の単位、六十分の一。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕秒 比古江(ひこえ)
[語系]
秒・杪・眇・渺・妙・miは同声。細小微妙の意がある。・票pi系統の字も声義近く、〔説文〕六上に「杪(べう)は木の標末なり」「標は木の杪末(べうまつ)なり」のように、ほとんど互訓に近い語である。
[熟語]
秒忽▶・秒末▶
[下接語]
寸秒・度秒・分秒・余秒
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秒
びょう
角度および時の単位。1度また1時の3600分の1を秒とする。元来は平均太陽日の8万6400分の1が1秒で、不変のものとして物理学の基本量の一つとしてCGS単位に採用されたが、地球自転に不整があることが判明し、地球の自転から定義した1秒は基本単位としての価値を失い、新しく地球の公転に基づく公転時によって定義されることになった。1950年天文基礎常数の会議がパリで開かれ、その席上、暦表時の概念が定義され、1952年国際天文学連合第8回総会で暦表時が採択されたが、時間の基本単位は恒星年によるとした。1955年第9回総会で太陽年を採用することになり、翌年パリで開催の国際度量衡委員会第10回総会でもこれを採用し、決議第5号で時間の基本単位秒を「秒は1900年1月0日正午に対応する太陽年の3155万6925.9747分の1とする」と定められた。日本においても1958年(昭和33)計量法を改正して、「秒は明治32年12月31日午後9時における地球の公転の平均速度に基づいて算定した1太陽年の3155万6925.9747分の1として東京天文台が現示する」と定めた。その後、原子時のセシウム原子133Csの固有振動数が暦表時との長期比較から決定され、固有振動数91億9263万1770ヘルツの時間間隔として1秒が定義されている。
[渡辺敏夫]
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秒 (びょう)
second
(1)時間の単位で,記号はs。国際単位系(SI)において,七つの基本単位のうちの一つである。秒は,もとは平均太陽日の1/86400として定義がなされていた。しかし,地球の自転が速くなったり遅くなったりすることがわかってきて,時間の単位の定義をさらに明確にするために,1960年に国際天文学連合によって出された太陽年に基づく定義にした。同じころ,原子や分子の二つのエネルギー準位間の遷移を用いて定義するほうがはるかによい精度で時間が正確に示されることがわかり,67年からは次のような定義がなされている。秒は,セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の9 192631 770周期の継続時間である。この定義のように秒を実現するため,世界のいくつかの研究所ではセシウムの時間標準器を研究し,製作している。また製品も市販されている。精度は,もっともよい装置の場合,相対値で10⁻13~10⁻14の不確かさに対応している。セシウム装置に比べると少し劣るが,安定性のよいルビジウム装置,水素メーザー,水晶時計などの時計があり,セシウムの時間標準器によって校正されている。一方,時刻は地球の動きにあわせた時刻目盛が協定世界時によって与えられており,これは標準電波方式によって報時信号が出されている。この時刻と秒の積算時間とには違いが出てくるので,年に1,2回必要に応じて閏(うるう)秒を用いて1秒だけ修正をしている。
(2)角度の単位。記号は〈″〉。1″=(1/60)′=(π/648000)radである。国際単位系(SI)以外の単位であるが,SIと併用される単位となっている。
執筆者:大井 みさほ
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秒
びょう
second
(1) 角度の単位 記号は″。1分の 1/60 ,1度の 1/3600 。 (2) 時間のSI基本単位 記号はs。 1sはセシウム 133 原子の基底状態の2つの超微細準位 ( F=4,M=0およびF=3,M=0 ) 間の遷移に対応する放射の 91億 9263万 1770 周期の継続時間である (1967年国際度量衡総会) 。これを原子時 ATという。時間の単位としては秒とともに,分,時,日の3単位が併用されている。時間はもともと地球の自転に伴う1日に基づいて定められたが,基準となる地球の自転に変動があり,1日に長短のあることが明らかになってきたので,まず 1935年国際天文学連合総会が「1sは平均太陽日の 1/(24×60×60) 」と定義し,観測点の経度を考慮にいれた世界時を世界共通の時系として採用した。平均太陽日とは太陽の年間平均速度で赤道上を等速運動する仮想の平均太陽による1日で,地球の自転角速度に一様性を与えるものであった。しかし水晶時計の発達により,自転角速度の永年減少や突然の不規則変化が明らかとなったので,さらに不変性の高い時系が 60年の国際度量衡総会で採用された。つまり「1sは 1900年1月0日 12時における地球の公転の平均角速度に基づいて算出した1太陽年の 1/31556925.9747 とする」というものであった。これを暦表時 ETという。世界時から暦表時への変更は,時間の基準が地球の自転から公転へと移った有史以来の大変更であった。さらに短期間に,時間の基準は原子へ移って原子時 ATの誕生となった。
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秒【びょう】
(1)時間の単位。記号s。国際単位系(SI)では七つの基本単位のうちの一つ。現在のところ秒の定義は〈セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9,192,631,770周期の継続時間〉。1967年に決められ,さらに1977年に地球のジオイド面上のセシウム133を基準とすることとなった。以前は暦表時1900年1月0日12時における地球の公転の平均角速度に基づき算出した1回帰年の31,556,925.9747分の1(1956年国際度量衡委員会,日本採用は1958年)。それ以前は1平均太陽日の86,400分の1とした。1秒=1/60分=1/3600時間。(2)角度の単位。記号 ″。1分の1/60,1度の1/3600。
→関連項目原子時|時間(物理)
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知恵蔵
「秒」の解説
秒
SIの基本単位の1つで、1967年の国際度量衡総会の決議による定義では「秒は、セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期の継続時間である」。時間の単位である秒は、もとは平均太陽日の8万6400分の1として定義されていたが、地球の自転の不整のために正確さに難があり、60年に太陽年に基づく定義に改められた。一方、同じ頃に原子時計の研究が進み、原子標準器の方が天体運動の周期よりも精度が高いことが明らかになって、67年に現在の定義に代えられた。定義の実現は10兆分の1の精度で行われ、標準電波によって広く伝達されている。時刻の標準もこれに基づいており、原点を1958年1月1日0時0分0秒の平均太陽時と定めた。実際には、原子時(TAI)と協定世界時(UTC)とにずれが生ずるため、両者を0.9秒以内に一致させるように、地球自転の不整はうるう秒によって必要に応じて調整される。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
秒
ビョウ
second
【Ⅰ】時間の単位.記号 s.国際単位系(SI単位)の基本単位の一つ.133Cs 原子の基底状態の二つの超微細構造の間の遷移に相当する電磁波の周期の9192631770倍と定義されている.【Ⅱ】角度の単位.1度の1/3600.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
びょう【秒】
➀時間の国際単位。記号は「s」。1分の60分の1。1sはセシウム133原子の放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間である。1875年に平均太陽日を基準として定められたが、1967年から精度の高い原子時計が用いられることになった。
➁角度・経緯度の単位。記号は「″」。1″は1°の3600分の1。1分の60分の1。πラジアンの64万8000分の1。
出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の秒の言及
【原子時】より
…セシウム原子がその二つのエネルギーレベル(3.0)と(4.0)の間を遷移するとき,そのレベル差に固有な周波数のエネルギーを放射または吸収する。現在の時間単位の〈秒〉はこの固有周波数で9 192 631 770回振動するのに要する時間として定義されている。セシウム原子時計はこの定義の〈秒〉を刻むように構成された時計である。…
【原子時計】より
…また,メーザー型は,スペクトル線を定める二つのエネルギー準位のうち上準位の原子や分子のみをマイクロ波空胴共振器中に集め,メーザー発振を生じさせることにより直接スペクトル線をとり出す方式で,アンモニアメーザー,水素メーザーなどによる例がある。
[原子時計の発達と秒の定義]
世界最初の原子時計は,1949年にアメリカ国立標準局(NBS)で試作されたアンモニア分子の吸収線を利用したものであった。同じころ,同局においてはセシウム原子による実験に成功し,次いでイギリス国立物理学研究所(NPL)のエッセンL.Essenが同じ原理の原子時計を製作し,55年より約3年間,その当時,時間の標準に採択された暦表時との比較を行った。…
※「秒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」