日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスプディン」の意味・わかりやすい解説
アスプディン
あすぷでぃん
Joseph Aspdin
(1779―1855)
イギリスにおけるセメント工業の祖。リーズに生まれ、れんが積み職人となる。1810年、イギリス人パーカーJames Parkerのいわゆるローマンセメントの特許(1796)が切れたので、セメントの製造を始め、1824年10月21日に「人造石製造法の改良」という特許を得た。その製法は、石灰石を焼いて生石灰(せいせっかい)とし、これをふかして極微細末のふかし石灰に変え、それに粘土を混ぜてクリンカーに再焼成する二重焼成法であった。その製品が、イギリスで建築材に愛用されているポルトランド島産の石灰石に色が似ているので、ポルトランドセメントと命名したとされる。このことからポルトランドセメントの発明者とされるが、人工セメントの発明には多くの先駆者がいることを忘れてはならない。
ウェークフィールドに工場を建て、1828年以来その製品がテムズ河底トンネルに使用されてから有名となった。その製法を厳秘に付し、特許期限が切れても製造を独占していたが、その製法を改良したのは息子のウィリアムWilliam Aspdin(1816―1864)である。父の最初の特許では原料の配合が経験的で、約1100~1300℃で焼成したがやがて1400~1500℃で焼結するようになり、1851年のロンドン万国博覧会でその強度が優れていることがわかり、さらに多くのセメント工場の設立を促した。
[山崎俊雄]