アセチル化(読み)あせちるか(英語表記)acetylation

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセチル化」の意味・わかりやすい解説

アセチル化
あせちるか
acetylation

アシル化の一種で、一般に有機化合物中の水素原子アセチル基で置き換える反応をいう。有機化学でよく使われるのは、アミノ基-NH2やヒドロキシ基-OHの水素原子をアセチル基CH3CO-で置換する反応である。第一アミンR-NH2および第二アミンRR'-NHの窒素原子と結合している水素原子をアセチル基で置換する(1)の反応をN-アセチル化とよび、アルコールR-OHおよびフェノールAr-OH(Arは芳香族基)の酸素原子と結合している水素原子をアセチル基で置換する(2)の反応をO-アセチル化とよぶ。

  R-NH2―→RNHCOCH3……(1)
  R-OH―→ROCOCH3……(2)
 N-アセチル化は無水酢酸を作用させると容易に進行する。O-アセチル化は、塩化アセチルまたは無水酢酸を用いて行うのが普通である。

 炭素原子上へのC-アセチル化も知られていて、塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒の存在下で芳香族化合物(ArH)に塩化アセチルを反応させると芳香族メチルケトンが得られる。

  Ar-H―→ArCOCH3……(3)
 アセチル化に用いる試薬をアセチル化剤といい、普通、塩化アセチル、無水酢酸が使われるが、ほか氷酢酸ケテン、臭化アセチルなどを用いることもある。なお、C-アセチル化については、「フリーデル‐クラフツ反応」の項を参照されたい。

[廣田 穰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アセチル化」の意味・わかりやすい解説

アセチル化
アセチルか
acetylation

有機化合物の酸素,窒素原子に結合している水素原子をアセチル基 CH3CO- で置換する反応。この反応に用いる試薬をアセチル化剤といい,普通は塩化アセチルや無水酢酸が用いられる。たとえば,ROH→ROCOCH3 のように,アルコールまたはフェノールの水酸基はアセチル化剤と酸または塩基性触媒の存在下でアセトキシ化合物を与える。水酸基の性質によって,この反応に難易があるので,構造解析にも利用できる。加水分解すれば容易に水酸基に変るので,有機合成の過程で水酸基を保護する目的に用いられることもある。アミノ基はアセチル化によってアセトアミド化合物を与える。

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