酢酸の酸無水物。化学式(CH3CO)2O。融点-68℃,沸点140.0℃の強烈な刺激臭をもつ無色の液体。クロロホルム,エーテルなどの有機溶媒に易溶。皮膚に触れると水ぶくれを生じる。水と徐々に反応して酢酸になるが,無機酸が存在すると急激に反応する。また無機塩基と激しく反応して酢酸塩となる。第三アミンの存在下にアルコールと反応して酢酸エステルを生じ,アンモニアまたはアミンと反応してアセトアミドを生じる(アセチル化)。この反応はセルロースの水酸基のアセチル化にも適用できる。
また塩化アルミニウムを触媒にしてベンゼンと反応させるとアセトフェノンが得られる(フリーデル=クラフツ反応)。酢酸ナトリウムの存在下にベンズアルデヒドと反応させるとケイ皮酸を生じる(パーキン反応)。
製法としては種々の方法が知られているが,(1)酢酸の蒸気を熱分解して得られるケテンと酢酸との反応,(2)アセトアルデヒドの自動空気酸化,(3)塩化アルミニウムを触媒とする酢酸とホスゲンの反応,(4)アセチレンと酢酸の反応で得られるエチリデンアセテートのルイス酸触媒分解などで製造されている。
おもにはアセチルセルロースの製造に用いられているが,医薬品,染料などの合成におけるアセチル化剤,縮合剤などの反応試剤としても重要である。
執筆者:井畑 敏一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
酸無水物の一つで、酢酸2分子から1分子の水をとった組成をもつ。
工業的には、アセトアルデヒドの酸化により直接無水酢酸をつくる方法と、酢酸の熱分解により発生させたケテンを酢酸と反応させる方法により製造されている。刺激臭をもつ無色の液体で、皮膚につけると水疱(すいほう)や炎症を生ずる。蒸気は催涙性をもっている。水には約2.7%溶けて、水と反応して徐々に酢酸になり、エタノール(エチルアルコール)に溶けて徐々に反応して酢酸エチルになる。これらの反応は酸があると促進される。エーテルなどの有機溶媒に溶ける。アセチル化剤として広く使用され、セルロースをアセチル化してアセチルセルロースをつくるのに使われるほか、アスピリンなどの医薬、染料、クマリンなどの香料の合成に用いられる。特定麻薬向精神薬原料に指定されている。「氷酢酸」とよばれている水の含有量が低い高純度の酢酸とは別物である。
[廣田 穰 2016年11月18日]
無水酢酸
(CH3CO)2O
分子式 C4H6O3
分子量 102.1
融点 -73℃
沸点 140.0℃
比重 1.0871(測定温度15℃)
屈折率 (n)1.39038
acetic acid anhydride.C4H6O3(102.09).(CH3CO)2O.アセトアルデヒドの酢化,ケテンと酢酸との反応などにより得られる.無色の刺激臭をもつ液体.融点-73 ℃,沸点139 ℃,44 ℃(2.0 kPa).1.080.1.3904.引火点53.9 ℃.エーテル,ベンゼンなどに可溶.皮膚に触れるとやけどを起こす.求核試薬と容易に反応する.水と反応して酢酸になる.工業的に重要で,アセチルセルロースの製造やアセチル化剤として用いられる.眼や粘膜を強く刺激する.[CAS 108-24-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新