アゾベンゼン(読み)あぞべんぜん(その他表記)azobenzene

デジタル大辞泉 「アゾベンゼン」の意味・読み・例文・類語

アゾベンゼン(azobenzene)

二つベンゼン環アゾ基で結合した芳香族アゾ化合物シス型、トランス型の異性体がある。シス型は一般的に不安定。トランス型は橙色結晶で、エーテルアルコールに溶け、水に溶けにくい。トランス型に光を照射すると一部がシス型に異性化する。この性質を利用して光の照射によって変形するフィルムが作られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アゾベンゼン」の意味・わかりやすい解説

アゾベンゼン
あぞべんぜん
azobenzene

代表的な芳香族アゾ化合物。トランス形シス形とが存在するが、シス形は不安定なためトランス形のみを考えることが多い。どちらも橙(だいだい)色の結晶。ニトロベンゼン亜鉛または鉄と水酸化ナトリウムで還元すると得られる。エーテル、アルコールに溶けるが水には溶けない。トランス形構造をもつアゾベンゼンに光をあてるとシス形構造をもつものが得られるが、後者は不安定で常温でもトランス形に変化する。アルカリ性で、還元するとヒドラゾベンゼンになり、酸性ではアニリンまで還元される。酸化するとアゾキシベンゼンとなる。染料製造に用いられる。

[谷利陸平]


アゾベンゼン(データノート)
あぞべんぜんでーたのーと

アゾベンゼン

 分子式 C12H10N2
 分子量 182.2
 融点  トランス形;68.5℃
     シス形;71.4℃
 沸点  293℃

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化学辞典 第2版 「アゾベンゼン」の解説

アゾベンゼン
アゾベンゼン
azobenzene

diphenyldiazene.C12H10N2(182.23).C6H5N=NC6H5.ニトロベンゼンをアルカリ性で還元するか,アニリンやヒドラゾベンゼンを酸化すれば生成する.たとえば,ニトロベンゼンを水酸化ナトリウム-メタノール溶液中で亜鉛を用いて還元する.トランス形とシス形が存在するが,後者は不安定で,室温で徐々にトランス形に変化する.トランス形は橙赤色の斜方晶.融点68 ℃,沸点293 ℃.λmax 228,314,433 nm(log ε 4.13,4.22,2.86).エタノール,エーテル,酢酸などに可溶.アルカリ性ではヒドラゾベンゼンに,酸性ではアニリンにまで還元される.LD50 1000 mg/kg(ラット経口).シス形はトランス形の溶液に光を照射すると一部生成する.橙赤色の板状晶.融点71 ℃.λmax 282,240 nm(log ε 3.71,4.06).

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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