改訂新版 世界大百科事典 「アデラード」の意味・わかりやすい解説
アデラード(バースの)
Adelard
12世紀の前半に活躍したイギリスのスコラ学者。生没年不詳。バースBathの生れ。文化史的に〈翻訳の世紀〉と呼ばれるヨーロッパ12世紀の典型的な学者の一人で,アラビア文化圏で開花していた科学的な新知識をラテン世界に翻訳・紹介するのに開拓者的な役割を果たした。フランスで学んだ後,旧来の知識に飽き足らず,イタリア,シチリア,シリアのほかに,おそらくパレスティナやスペインをほぼ7年にわたって巡歴し,新知識の吸収に努めた。その後故郷のバースに戻り,皇太子時代のヘンリー2世の師傅となった。彼の主要な翻訳としては,ユークリッドの大著《ストイケイア》,フワーリズミーの《天文表》と《インド式数学について》等が挙げられる。また彼自身の著作としては,《同一と差異について》と《自然の諸問題》がある。これらの著作から彼が折衷的なプラトン主義者であったことがうかがえる。
執筆者:横山 雅彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報