無差別説(読み)むさべつせつ(その他表記)indifference theory

改訂新版 世界大百科事典 「無差別説」の意味・わかりやすい解説

無差別説 (むさべつせつ)
indifference theory

中世普遍論争のなかで現れた学説一つギヨーム・ド・シャンポーは最初極端な実念論をとり,同じ種に属する個物はみな同一だと主張して非難されたため,同一とは〈差別がない〉ことだと答えた。さらにこれを説明して,ソクラテスプラトン本質において〈類似している〉ゆえに同じ人間であると論じた。ギヨームはここで〈類似〉を普遍概念の基礎とみなすことにより,極端な実在論をしりぞけ,普遍概念のうちにおく〈概念論conceptualism〉に転じたとみられる。同時代のバースアデラードにも同じ見解がある。
普遍論争
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無差別説」の意味・わかりやすい解説

無差別説
むさべつせつ
indifference theory

中世哲学の認識論上の一つの立場。普遍者の実在を主張する極端な実念論に対して,普遍とは類,種,個などの名称であり,それは同一物の側面にほかならず,それぞれ論理的位置は異なるが実在的な区別はないとした。シャンポーのギヨームらが提唱。 (→普遍論争 )

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世界大百科事典(旧版)内の無差別説の言及

【ギヨーム・ド・シャンポー】より

…彼の名は中世の普遍論争史に記録されるが,それは12世紀初期の極端な実念論を代表したため,弟子のアベラールによって徹底的に攻撃されたことである。すなわち,最初は同じ種に属する個物はみな実体的に同一であるとの説をとっていたが,それはつきつめれば汎神論になるのではないかとの批判を受けて,同一とは本質のことではなく差別がないという意味だとこたえ,いわゆる無差別説を主張した。ギヨームは論争に敗れてサン・ビクトール修道院に退き,のちにルイ6世によって建てられたサン・ビクトール学院の基礎づくりに励んだ(サン・ビクトール学派)。…

※「無差別説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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