アファル低地(読み)アファルていち(その他表記)Afar Depression
Afar basin

改訂新版 世界大百科事典 「アファル低地」の意味・わかりやすい解説

アファル低地 (アファルていち)
Afar Depression
Afar basin

エチオピア北東部で,紅海とアデン湾とアフリカ大地溝帯の三つが会合する所に位置し,エチオピア台地,ソマリア台地と紅海で囲まれた1辺500kmほどの三角形の陸地アファール低地ともいう。陸上にありながら海底地殻の性質を示す特異な地域である。熱帯にあるうえ,海洋から吹く湿った風が周囲の台地によってさえぎられているので,いちじるしく乾燥して暑く,大部分は砂漠やサバンナとなっている。人間や動植物は少ない。それでも,アデン湾と紅海のつなぎ目に面する町ジブチは航路上の要地,エチオピアからの輸出港として栄え,32万の人口を有する。1977年に独立したジブチ共和国の首都でもある。

 アファル低地の地質構造は1960年代の末ごろからドイツ,フランス,イタリアの観測陣によって詳しく調査されはじめた。その地形を特徴づけるのは,西縁と南縁をくぎる急な崖と,海岸に沿った標高数百mのダナキルDanakil山地とアイシャAisha山地,および低地の中央を走る断層帯である。いずれも正断層によってつくられた地形であるが,中央の断層に沿っては火山カルデラが並んでいる。大部分の火山岩は,大洋中央海嶺の海底玄武岩と海山のアルカリ玄武岩との中間の化学成分をもつ。火山の形は海底に見られるギヨーと似ている。断層は現在でも活動的で,断層に沿った地震も観測されている。アファル低地はアラビア半島がアフリカから分離してできた海底で,紅海の一部であり,今なお海底拡大が起こっている地域である。紅海やアデン湾に接するダナキル山地アイシャ山地が隆起したために,数万年前以来干上がってアフリカの一部となっている。低地の大部分が岩塩セッコウなど,海水の蒸発によって堆積したとされる厚さ900m以上の層で覆われているのも,かつて海底にあった証拠の一つである。
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人類進化上重要な化石が数多く発見されている地域でもある。ここではアフリカ東部を縦走する大地溝帯の低地が,南西から北東に向かって三角形に拡がり紅海とアデン湾に続く。アワッシュAwash川が南西の高地からアファール低地を北西へと流れるが,紅海に達することなく,砂漠の中に吸収されている。かつて湖に堆積した中新世から更新世の地層が広く露出しているので,そこから人類化石が数多く発見される。とくに1973年にジョハンソンD.Johansonたちによって,ハダールで発見されたアウストラロピテクス・アファレンシスの女性個体骨格化石〈ルーシー〉が有名。その後,アメリカのホワイトT.White,日本の諏訪元,エチオピアのアスフォーB.Asfawたちによって精力的な調査が続けられている。1990年代以降,ミドル・アワッシュMiddle Awashの地域で発見が続き,アラミスAramisではアルディピテクス・ラミダス,アサ・コマAsa Komaではアルディピテクス・カダバ,ブーリBouriではアウストラロピテクス・ガルヒ,ゴナGonaではホモ・エレクトス,ボドBodoではホモ・ハイデルベルゲンシス,ヘルトHertoではホモ・サピエンス・イダルツなどの化石が発見されている。アファール低地の南方では,チョローラChororaでゴリラの祖先のチョローラピテクス・アビシニクスの化石,コンソKonsoでパラントロプス・ボイセイの化石が発見されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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