アフガン戦争(読み)あふがんせんそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフガン戦争」の意味・わかりやすい解説

アフガン戦争
あふがんせんそう

インドを支配するイギリスアフガニスタンとの一連の戦争。19世紀に入ってアフガニスタンは、中央アジアからのロシアの南下とイギリスのインド防衛の接点となり、3次にわたるアフガン戦争はいずれもイギリスの干渉で起こった。

[加賀谷寛]

第一次

1838年から1842年までにわたった戦争。この直前の1837年、ロシア人に指揮されたイラン軍がヘラートを包囲し、イギリス人将校がこの防衛にあたっていた。イギリスはこのロシアの進出に危機感を抱き、カブール権力を握っていたドースト・ムハンマドを退けて、親英的なシュジャー・ウル・ムルクを王位につけようと干渉に踏み切った。1838年2月、進入したイギリス軍はカンダハールを落とし、カブールに進んだ。ドースト・ムハンマド王は逃げ、1839年8月シュジャー・ウル・ムルクが王位についた。しかし、カブールでは反英の反乱が起き、1842年1月イギリス軍はカブールから東方への撤退を決定した。1万余のイギリスならびにインド人兵隊は撤退の際に殲滅(せんめつ)された。ジャララバード、カンダハールを保持していたイギリス軍は、カブールを懲罰的に再占領したが、引き揚げざるをえず、1843年イギリスは、抑留していたドースト・ムハンマドをインドから送ってふたたび統治させた。

[加賀谷寛]

第二次

1878年から1880年までにわたった戦争。ドースト・ムハンマド王の第3子シェール・アリー王が、イギリスによる王朝内紛調停とイランとの紛争に対する仲介に不満を抱いてロシアに接近した。これに対し、イギリス軍がカブールを占領、シェール・アリー王はロシアに援助を求めて逃亡した。シェール・アリー王の死後、その子ヤークーブが1879年王を宣し、イギリスと講和(ガンダマク協定)した。アフガニスタンはこの講和により、インドに領土を割譲し、イギリス使節駐在を認めた。しかし、数か月後、カブールで反英蜂起(ほうき)が起こり、使節団が皆殺しにされ、ここに戦争が再開された。イギリスはカブールを奪回したがマイワンドで撃破されて、1880年ドースト・ムハンマドの孫アブドゥル・ラフマーンを、外交権をイギリスに譲ること、侵略に対しては援助することを条件に王位につけて撤退した。1901年アブドゥル・ラフマーンの死後即位した子のハビーブッラーは、1915年、父がイギリスと取り決めた条約を批准したので、アフガニスタンはイギリスの保護国となった。

[加賀谷寛]

第三次

1919年2月、軍部を握ったハビーブッラーの第3子アマーヌッラー・ハーンが即位し、イギリスに敵対して独立を求めたが、空襲を受けて休戦を申し入れ、同年8月ラワルピンディ条約を結んだ。ここに独立が正式に承認された。

[加賀谷寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アフガン戦争」の意味・わかりやすい解説

アフガン戦争
アフガンせんそう
Afghan Wars

3次にわたるアフガニスタンとイギリスの戦争。第1次 (1838~42) は,1818年ドゥラーニー朝に代って勢力を得たバーラクザーイー朝ドースト・ムハンマドに対して,ドゥラーニー朝のシャー・シュジャーをあと押しするイギリスがイラン軍のヘラート攻撃を退けてアフガニスタンをその保護下におこうとして起した。イギリス軍は 39年カブールに入りシャー・シュジャーを復位させたが,国民の抵抗激しく,41年カブールを撤退する途中で全滅し,また 42年シャー・シュジャーが暗殺されるに及んで,イギリス軍はアフガニスタン撤退を余儀なくされ,ドースト・ムハンマドが再び王位についた。第2次 (78~80) は,イランとのシースターン国境紛争に関する 73年のイギリスの仲介による調停を不満とするドースト・ムハンマドの子シェール・アリーがロシアに接近,イギリス大使の入国を拒否したことから起った。イギリス軍は 78年カブールを占領。シェール・アリーの子ムハンマド・ヤークーブにインドへの領土割譲と大使受入れを承認させたが,カブールにおけるイギリス使節団員の虐殺事件の結果,イギリス軍は再度カブールを占領,ヤークーブは廃されアブドゥル・ラフマーンが王位についた。この後 1905年アフガニスタンはイギリスの保護国となった。第3次 (1919) は,19年王位についた親ソ派のアマーヌッラーがイギリス=インド政府に対して起したもの。しかし,彼は1ヵ月後休戦を申し出,19年8月8日ラワルピンジー条約が結ばれた結果,アフガニスタンの独立が正式に承認された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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